「経済効果が高く、環境にもやさしい」観光プランってどう考える?

「経済効果が高く、環境にもやさしい」観光プランってどう考える?

サンドイッチの経済効果を測るには

国際的な大会やイベントが日本で開催されたとき、新聞などで「国内に〇億円の経済効果!」といった記事を見かけるでしょう。その「経済効果」の測定方法を、店で「サンドイッチの注文が増える」場合で見ていくとします。まず店の売り上げが増えますが、それ以外にサンドイッチに使うパンの工場で売り上げが発生し、さらにパンの原材料である小麦粉の売り上げも発生します。川に例えると下流から上流へさかのぼるように、産業間の取引を積み上げていきます。具材である卵やハムなども同じように取引関係を見ていきます。このように地域経済の研究では、地域活性化やその対策などを、間接的な経済効果も含めて幅広くとらえて分析します。

「環境にやさしい商品」というけれど

最近は、「環境にやさしい」をアピールする商品をよく見かけるようになりました。そういった商品の環境への配慮について、例えばパン工場がパンを1つ生産するのに、自分の工場から出るエネルギーの消費量やCO₂排出量などは把握できます。しかし、パンの原材料である小麦粉の農産物としてのCO₂排出量やパンの輸送にかかる部分など、間接的な環境への影響はパン工場だけでは把握できません。企業の社会的責任として、間接的な環境の影響まで把握したいというニーズもあり、間接的な経済効果を測る手法を応用して、環境汚染や環境負荷を測る手法の研究も進められています。

持続可能な地域経済のために

大気汚染や地球温暖化問題も、普段の生活の営み、つまり経済活動によって発生するものであり、経済と環境は表裏一体の関係にあります。そのため、今後の地域経済の活性化を考える上では「経済と環境の両立」の視点も求められます。観光プランを考えるにしても、例えば「経済効果が高いけれど、環境負荷も大きい」ということでは、社会にとって望ましいものとはいえません。経済政策と環境負荷などを具体的な計算で導き出しながら、持続可能な地域経済をめざす必要があるのです。

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先生情報 / 大学情報

福山市立大学 都市経営学部 都市経営学科 教授 長谷川 良二 先生

福山市立大学都市経営学部 都市経営学科 教授長谷川 良二 先生

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経済学、環境経済学、地域経済論

メッセージ

高校生は、経済学や経済そのものに関心がない人の方が多いかもしれません。アルバイトをしていても、本格的に経済活動をしているわけではなく、社会人になって所得を得ることで初めて「経済活動の主役」になります。そこで経済に関心を持たざるを得ない状況になるのに、じっくりと勉強をする機会がなかなかありません。経済は普段から当たり前にある営みなので、注目されることも少ないですが、間違いなく大事なことです。社会に出た時に必要な知識としても、大学で経済を学ぶ価値はあると思います。

福山市立大学に関心を持ったあなたは

福山市立大学は、福山市が設置する公立大学、4学期制による効果的な履修、4年間を通じた少人数参加型授業や、街と一体となったキャンパスを拠点に、福山市全体をフィールドとした体験型授業の充実が特色です。公立大学の特色を生かし、教育学部では地域の教育・保育施設との連携により実践力のある教育者・保育者を目指します。都市経営学部は全国初の学際的な学部で、環境を基盤として工学系、経済学系、社会学系の3つの領域を総合的に学び、持続的な都市社会の発展を担える人材を育成します。