色素のナノ粒子の薄膜を使い、手軽に汚染をチェック!
汚染の検出は難しい!
病院や工場の跡地や排水に水銀や鉛といった有害物質が含まれていることがあります。土壌汚染や水質汚染を調べるのが難しいのは、数千万分の1%といったppbレベルの量を検出しなければならないからです。例えば2008年に問題となった汚染米にしても、有害物質のカドミウムより、これによく似た亜鉛を多く含んでいるため、高度な機器を使って分析する必要がありました。しかし、どうしても時間と費用がかかることから、もっと簡易的な検出方法として有機化合物の色素を使うことが考えられています。
ナノ粒子で手軽に検査
それが、色素をナノ粒子の薄膜にすることで人間の目に映る2~3マイクロメートルにシグナルが凝縮されて、結果的に感度を上げて微量の有害物質を検出することができるという検査方法です。
この方法は、試薬量も少なく、どんな試薬でも使えることから汎用性も高いのです。さすがに機器分析の方が精度は上ですが、明らかに汚染されていない土壌や水を除くための事前の検査としてならば、十分に役目を果たすことができます。また現在、アジア各地の井戸がヒ素に汚染されていることが問題となっていますが、そうした井戸水の検査も手軽にできるようになります。さらに膜の形状を漏斗(ろうと)のようにして、その中を水が通るようにすれば、日常的なモニタリングも可能です。
製品化までのハードル
通常、有機物の色素は光に弱い性質があります。道路沿いに掲げられた看板の文字が何年かすると褪色(たいしょく)してしまうのはそのためです。しかしナノ粒子にすることで褪色しにくくなります。問題は薄膜の作成が難しいことです。無機物と違って有機物は結合する力が弱く、帯電しやすいという欠点もあるので、性能の安定した薄膜を大量生産することが難しく、製品化のネックとなっています。
しかし、有機物ならではの長所もあることから、有機化合物の色素で薄膜を作る技術自体には、かなりのニーズがあると考えられているのです。
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長岡技術科学大学 工学部/工学研究科 物質生物工学分野 准教授 高橋 由紀子 先生
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