「働き過ぎの細胞」がアレルギーを起こす? サイトカインの研究

「働き過ぎの細胞」がアレルギーを起こす? サイトカインの研究

サイトカインが過剰に出ると

日本人の2人に1人が、花粉症などのアレルギーに悩まされていると言われています。体内に細菌やウィルスなどの病原体が入ってきたときは、さまざまな免疫細胞が協力し合って病原体をやっつけます。このとき免疫細胞は「サイトカイン」というタンパク質を作り、サイトカインを受け取った免疫細胞が病原体の除去に参加します。アレルギーにも免疫細胞が関わっています。花粉などに免疫細胞が出会ったときは、免疫細胞はそれらを分解しておしまいになります。しかし、花粉などに対しても、過剰にサイトカインが作られ、免疫細胞が働きすぎると、病原体に感染したときのように、病気(アレルギー症状)が起こるのです。

アレルギー症状とサイトカインの関係

アレルギー疾患であるアトピー性皮膚炎やぜんそくにも、サイトカインが関わっています。サイトカインには、「インターロイキン(IL)」という分子群があります。そのうち、「IL-4、IL-13、IL-31」はアトピー性皮膚炎に、「IL-4、IL-5、IL-13」はぜんそくに関わることがわかっています。これらサイトカインの働きをブロックする薬が開発され、アトピー性皮膚炎やぜんそくの治療薬として使われています。

ゲノム編集の技術が研究のカギ

こうした研究にはゲノム編集技術を使います。マウスにぜんそく症状を起こさせたところ、患部でサイトカイン「IL-33」が作られていました。しかし、このIL-33がぜんそくに関わるのかはわかりません。そこで、ゲノム編集技術によりIL-33遺伝子を壊して、IL-33を産生できないマウスを作ります。このIL-33欠損マウスでは、ぜんそくが起こりませんでした。つまり、IL-33が過剰に出ると、ぜんそくになることが分かったのです。今、IL-33の阻害剤の開発が進められています。サイトカインはたくさんあり、今後、アレルギーを起こすサイトカインの機能の解明が進めば、その阻害剤が開発され、多くの人をアレルギーから救うと期待されています。

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先生情報 / 大学情報

広島大学 生物生産学部 生物生産学科 教授 中江 進 先生

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免疫学、実験動物学、アレルギー内科学

メッセージ

教科書に書いてあることが必ずしも正しいとは限らないと思っていてください。教科書に書いてあることは、その当時の技術で明らかにされたものに過ぎないのです。現在の最先端の技術で調べると、教科書が書き換えられるような事実がたくさんあります。教科書をうのみにするのではなく、常に、それが本当なのかなと疑う目を、頭の隅に置いて勉強してください。自分の目で見て、実験をして、新しいものは見つかります。それが、イノベーションを生み出す力になります。

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