農作物を守る用心棒!―天敵を味方に害虫防除―
農作物を害虫から守る方法
農作物を害虫から守るための方法としては、化学的防除(殺虫剤を使う)、耕種的防除(抵抗性品種を使う)、物理的防除(袋掛けをする)、生物的防除(天敵を使う)があります。どれか1つの方法だけで害虫を防除することは難しく、状況に応じて組み合わせることが大切です。また、たとえ有効な方法でも、労力やコストがかかり過ぎると実現が難しくなります。
天敵を使った防除の特色と有効性
殺虫剤や抵抗性品種では、遅かれ早かれ、その効果を乗り越える害虫が出現します。また、袋掛けのような物理的な対策では、労力が追いつかないこともあります。こうした状況を打開できるのが天敵の長所です。近年では、室内で大量増殖させた天敵を農地に放すだけではなく、天敵に一層活躍してもらうため、農地に天敵が生息しやすい環境を整備する研究も進められています。また、天敵によって害虫は減りますが、完全にいなくなることはありません。害虫がいなくなれば天敵も死に絶えるからです。害虫の個体数が少なくなり局所的に安定することが重要で、そうなれば、被害数は限られ、経済的にも損害を受けることはないのです。
天敵の活用例
クリにはクリタマバチという害虫がいます。新芽に卵を産み付け、コブができます。コブの中の幼虫が養分を吸収して、枝や実の成長を阻害します。幼虫はコブの中にいるので、殺虫剤が効きません。また、大きさが2~3ミリと極小なので、網掛けしてもすり抜けてしまいます。抵抗性品種も作られましたが、それを乗り越えるものが出現しました。そして、クリタマバチはメスだけで産卵できるので、爆発的に増えるのです。
この害虫にはオナガコバチという天敵がいます。害虫が作ったコブに針を刺し、中の幼虫に卵を産み付けるという害虫に寄生する天敵です。しかも、クリタマバチだけを標的にするので、この天敵を害虫がいる場所にまくだけで防除できるのです。
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九州大学 共創学部 共創学科 講師 松尾 和典 先生
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