半導体にゲルマニウムを活用!
半導体の歴史は微細化の歴史
半導体における材料開発には、基礎研究から始まり実用化されるまでに、最低でも10年はかかります。つまり、10年後を見越してあらゆる可能性を探っておくことが必要です。半導体の集積回路(LSI)はシリコンの表面に微細なパターンを作って、トランジスタなどのデバイスをたくさん搭載しています。その加工寸法を小さくすることを“微細化”と言いますが、半導体はこの微細化によって発展してきました。微細化が進めば進むほど集積度が上がって多機能となり、例えばメモリであれば記憶容量を大きくすることができます。また、同じ集積度であれば、半導体のチップの面積を小さくすることも可能です。微細化は多機能化、高速化、コストダウンを実現し、半導体を一大産業へと推し進めました。
今までの材料にも限界が
しかし、この微細化が進んだことによる次の課題もあります。これまでトランジスタのゲート絶縁膜に使われてきた二酸化ケイ素(SiO₂)の膜の厚さが、原子数個分にまで薄くなってしまったのです。二酸化ケイ素は化学的に安定しているうえに、シリコン表面に熱酸化で形成される二酸化ケイ素膜は、ほかに類を見ないほど界面に欠陥がありません。シリコンと二酸化ケイ素ほど相性のいい組み合わせはないと言われ、いろいろなインテグレーション(集積化)技術を生み出してきましたが、それもそろそろ限界のようです。
古くて新しい注目の材料、ゲルマニウム
そこで注目を集めているのが、ゲルマニウム(Ge)です。1947年、点接触型トランジスタで音声信号を増幅する実験に成功してから半導体の歴史は始まりましたが、このときに使われたのがゲルマニウムでした。単結晶におけるキャリア移動度(電子の移動のしやすさ)はシリコンより優秀でありながら、当時は使いこなすことができませんでした。しかし、シリコンで培った技術のある今ならそれも可能です。実用化される10年後により良いバトンタッチができるように、選択肢を広げて研究をすることが材料開発の使命なのです。
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