発展とコストのはざまで揺れる半導体

発展とコストのはざまで揺れる半導体

幅広く使われながら、知られていない半導体

携帯電話からパソコン、デジタルテレビにハイブリッドカーまで、私たちを取り巻く環境は、年を追うごとにどんどん便利になっています。こうした情報化社会を支えているのが半導体です。ほとんどの電化製品に必ずといっていいほど組み込まれていますが、その技術についてはあまり知られていません。

1センチ角に日本の人口と同じ数のスイッチが

半導体はシリコンウエハ(多結晶シリコンから成る半導体の原材料)の上に材料を集めて、さまざまな加工を繰り返し施して作られています。以前、シリコンウエハは直径200ミリでしたが、現在は300ミリです。これを将来的には450ミリにしようと、世界中で研究されています。シリコンウエハは最終的には1センチ角のチップに切断されますが、サイズを大きくすればするほど一度にたくさんのチップが取れてコストダウンができるというわけです。この1センチ角に切断されたチップ、いわゆる「LSI」と呼ばれている集積回路の中には、電流を流して信号に変えるスイッチが日本の人口と同じぐらい入っています。さらにこれも、10年から15年の間には世界人口と同じになると予測されています。例えば近年、腕にセンサーを取りつけて、その人の健康状態をリアルタイムで病院に送る在宅医療のシステムが登場して話題になりましたが、半導体の処理能力が向上すれば大量のデータに対応することができ、多くの人が同時に利用することも可能になるのです。

半導体のさらなる発展の鍵は“知恵”

このように、半導体は技術革新と応用分野の拡大で性能を上げ、用途を広げてきましたが、その分、製品開発にかけるコスト負担も年々大きくなっています。今後コストを減らすには、実用化される製品に合わせて個別のLSIを作るというような、ある種、オーダーメード的な考えも必要でしょう。また、世界との技術競争については、大学と産業界、公的研究機関の連携が一層大事になります。いかに知恵を使うか、それが半導体をさらに発展させる鍵になります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

名古屋大学 工学部 物理工学科 応用物理学コース 教授 財満 鎭明 先生

名古屋大学 工学部 物理工学科 応用物理学コース 教授 財満 鎭明 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

工学、応用物理学、結晶工学

メッセージ

興味を持ったら自ら調べる、あるいはそのことについて知っている人に会って話を聞くなど、行動をともなう好奇心を持ってほしいです。半導体工学という分野は材料、プロセス、デバイス、回路、システム、デザインと幅広い興味が必要です。そこが特殊であり、またこの分野の面白味でもあると思います。そのほか、巡りあったチャンスに飛び込めるかどうかも大事です。希望するものと少し違っても、まずは挑戦してみる方がいいと思います。それもひとつの好奇心だと思います。

名古屋大学に関心を持ったあなたは

名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。