身の回りの電子機器をもっと高性能にするICの新材料

身の回りの電子機器をもっと高性能にするICの新材料

ICは現代技術の心臓部

私たちの生活に身近な携帯電話やゲーム機、パソコン、テレビ、LED、太陽電池などあらゆる電子機器に、IC(集積回路)が使われています。ICは、条件によって電気を通したり、通さなかったりする性質を持つ半導体でできているためICのことを半導体と呼んだりもします。
ICの中には、オンオフの切りかえができるスイッチが多いときは1000億個ほども並んでいます。それらを組み合わせて、計算やデータの記憶、情報の出し入れができるのです。

自動車はICの固まり

自動車はICの固まりとも言えます。エンジンの制御はもちろん、パワーステアリング、ドアロック、エアバッグ、オーディオ、カーナビなど、自動車はもはやICなしでは成り立ちません。
そのIC一つひとつの性能を上げようと、材料の研究が行われています。いまICに使われている材料は「シリコン」が主流ですが、次世代の材料の一つとして注目されているのが「シリコンカーバイド(炭化ケイ素が原料の半導体)」です。シリコンカーバイドはシリコンに比べ、耐熱性、処理速度、省エネに優れています。自動車に搭載するなら、約400℃の高温でも安全に動作しなければなりませんが、その点、シリコンカーバイドは最適です。その上、小型化や燃費の向上も可能なのです。

実用化に向けた2つの課題

いいことずくめのシリコンカーバイドですが、今のところ、価格がシリコンの約100倍するため価格の低下が課題です。また、効率のよい生産方法も確立されていないので、大量生産ができません。
実は、シリコンカーバイドを使ったものは、エアコンなどの一部製品で使われていますが、本格的な実用化はこれからです。自動車だけではなく、パソコンなどさまざまな家電や太陽電池、工場の生産システムなどで、高性能化、小型化、省エネ化の切り札として期待されています。価格の低下と大量生産という課題をクリアしたとき、シリコンカーバイドのICは一気に普及することでしょう。

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先生情報 / 大学情報

九州工業大学 工学部 電気電子工学科 教授 中尾 基 先生

九州工業大学 工学部 電気電子工学科 教授 中尾 基 先生

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応用物理学

先生が目指すSDGs

メッセージ

九州工業大学の工学部総合システム工学科では、「PBL(Project-Based Learning:課題解決型学習)」という新しい工学教育の取り組みを行っています。高校生のあなたには、グループ学習という方がわかりやすいかもしれません。これは、学生が5~6名のチームを組んで課題に取り組み、自分たちで答えを発見していくというものです。この学習法で、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力、主体性など社会で必要とされる能力を身につけてほしいと思います。

九州工業大学に関心を持ったあなたは

九州工業大学は前身である明治専門学校の開校(1909年)以来、「技術に堪能(かんのう)なる士君子」の養成を教育理念に掲げ、品格と創造性を有した高度技術者・先導的研究者を育成しています。工学部・大学院工学府では学生フォーミュラー大会出場や有翼ロケット打上げ実験、小型人工衛星開発などの学生課外活動が盛んで、PBLなどの講義とあわせて実践力・応用力の強化に力を入れています。また国際交流協定校や海外インターンシップへの派遣を通じてグローバル人材育成にも注力しており、非常に高い就職率に結びついています。