「透明マント」だけじゃない、「メタマテリアル」の可能性
そこにあるものが見えなくなる
かぶるだけで周囲から見えなくなる「透明マント」といえば、アニメ作品に出てきそうな夢のあるアイテムですが、実は実現の可能性が高まっています。物体の形や色が見えるのは、その物体に当たった光が、反射して目に入ってくるからです。その光の反射(屈折)率を自然界では起こりえない状態にすることができる、「メタマテリアル」という人工素材で包み込めば、その物体は目に見えなくなるわけです。
太陽のエネルギーが地球に伝わるのは
光は、スマホや無線LANの電波と同じ「電磁波」の一種です。石油ストーブやたき火の炎が赤っぽく見えるのは、炎から放射される電磁波が、赤外線とそれに近い波長の赤い色の光で構成されているからです。
地球と太陽とは約1億5000万kmも離れていて、宇宙空間には熱を伝達する空気などの物質が存在しません。それでも日差しを浴びると温かく感じるのは、太陽光の約半分が赤外線で構成されていて、その電磁波が物体の分子を振動させて熱を発生させるからです。この現象を「熱輻射」と呼びます。
光と熱の制御で生まれる新たな発電手法
メタマテリアルで光を制御できれば、同時に熱輻射も制御できるようになります。その技術が実用化されれば、超高温のものを効率よく冷やしたり、熱輻射を半導体に当てて、太陽光発電と同じ原理で電気を作り出したりといった、これまでなかったテクノロジーを生み出せるようになります。
例えば宇宙探査衛星は、太陽や惑星から放射される熱輻射をダイレクトに受ける空間で機体が高温になり、機器類の誤作動や損傷のリスクがありますが、メタマテリアルを使うことでそれを防御することができます。また、探査衛星自身が生み出す熱を再利用することで、太陽光発電が使えない深宇宙に到達しても、機器類に電気を供給することが可能になります。さらに宇宙より身近な地上でも、製鉄工場では鉄を溶かす段階で膨大な熱輻射が発生しています。この「大気中に捨てているだけの熱」を使って発電する手法が開発できるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
新潟大学 工学部 工学科 機械システム工学プログラム 准教授 櫻井 篤 先生
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