「カビ」は未知の能力を秘めたスーパーバイオマシン

「カビ」は未知の能力を秘めたスーパーバイオマシン

無限の可能性をもつカビの物質製造能力

微生物のなかで、飛び抜けて高等な生物はカビです。ひと口に微生物といっても細菌や酵母、放線菌などさまざまな種類があります。そのなかでカビは、もっている遺伝子の数が飛び抜けて多いのです。そのためカビは、多様な酵素反応を起こせます。このカビの酵素反応を応用すれば、いろいろな物質を作ることができるのです。
その一例が抗生物質で、抗生物質は放線菌を使っても作ることができますが、カビのほうが多様性があります。現時点でも未知のカビはたくさんあり、その可能性はほぼ無限大に広がっていると言ってもいいでしょう。

制御の難しさがカビの難点

医薬品製造をはじめとして、あらゆる工業分野に応用可能なカビには大きな期待が寄せられています。しかし、カビには一つ、重大な欠点があります。それは培養のコントロールや形態の制御が難しいことです。思った通りの形態にカビを培養するのは、簡単なことではありません。そこで開発されたのが新型の「バイオリアクター」、すなわち生体触媒を使って生化学反応や発酵生産を行う装置です。このバイオリアクターを使って抗生物質や医薬品の原料を作るシステムの研究が進められています。

カビを使った画期的な新薬の可能性も

今のところ、抗生物質を作るのに有望なカビが30種類程度見つかっています。なかには非常に製造能力の高いカビも見つかっており、これを活用すれば医薬品の生産能力が従来の10倍から100倍程度まで高まると期待されています。
また、同じ一つのカビから多様な物質が作られる可能性もわかってきました。その詳しいメカニズムについては研究が進められているところです。ほかにも植物に寄生するカビなら、その植物の遺伝子を取り込んで変化することもわかっています。カビには、未知の能力が数多く秘められており、いずれ画期的な抗がん剤の原料を作ることも可能と期待されているのです。さらには、カビが作った医薬品原料を酵素や有機化学反応で改良する研究も進められています。

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先生情報 / 大学情報

金沢工業大学 バイオ・化学部 生命・応用バイオ学科 ※2025年名称変更予定 教授 小田 忍 先生

金沢工業大学 バイオ・化学部 生命・応用バイオ学科 ※2025年名称変更予定 教授 小田 忍 先生

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微生物工学、天然物化学、有機化学

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メッセージ

意外かもしれませんが、実はバイオや化学の実験は半分が体力勝負です。実験器具を洗うのにもとても時間がかかります。体が丈夫でガッツがあることは、科学を学ぶための大切な条件です。しかも実験にはミリ単位の精度が必要です。手先が器用であること、一つひとつの作業をていねいに進められることも重要なポイントです。これら身体面の条件に加えて、とにかく知的好奇心が旺盛で、質問好きであることも求められます。教師を質問攻めにするぐらいの意気込みで、可能な限りたくさん疑問をもちましょう。

金沢工業大学に関心を持ったあなたは

金沢工業大学では、講義等で「知識を取り込み」、それを仲間との実験・演習の中で「思考・推論」し、組み替え結びつけることで「新たな知識を創造」し、その成果を「発表・表現・伝達」する独自の学習プロセスを全科目で導入しています。さらに高度な研究環境の中で産学協同による教育研究を実践するとともに、夢考房など知識の応用力を高める多彩なフィールドを実現することで、獲得した知識を知恵(応用力)に転換できる「自ら考え行動する技術者」を育成しています。