実は細長くてつぶつぶ!? 細胞寿命に関わるミトコンドリア
糸状と粒状のバランスが大事
教科書に必ず載る真核生物の細胞にミトコンドリアを見ることができます。生物のエネルギーを効率よく作り出す大事な小器官は、折り畳まれた膜構造を中にもつ楕円形の粒の形状として表現されることが多いため、コロコロしているイメージを持つ人も多いと思います。しかし、実際のミトコンドリアは細長い糸状(管状)をしており、粒状(断片)のものも観察されます。糸状のミトコンドリアは、時々断片化しては再び糸状に戻ることで絶えず正常に機能します。
ミトコンドリアの状態悪化がひき起こす病気や加齢
断片化が起こる理由として、機能が低下した部分をちぎって消化し、良いミトコンドリアを残すと考えられています。さらに新品のミトコンドリアが補われ、融合することで細胞内の量が維持されます。このはたらきが低下している例として、パーキンソン病があります。脳の神経細胞の不要なミトコンドリアが消化されずに溜まってゴミ屋敷の様相を呈しています。当然、細胞の機能は低下します。また、老人の細胞ではミトコンドリアは粒状の割合が、若い細胞よりも高くなっています。融合と分裂のバランスの偏りも老化の一因と考えられ、特に融合に関わる遺伝子の異常によって老化が著しく加速することが明らかとなってきました。
ミトコンドリアDNAが細胞の死に関わる
研究対象のアカパンカビは、菌糸の先端が伸び続けることで養分を吸収し代謝を行います。この先端成長は2年以上続きますが、ある遺伝子の異常により、20日程度で伸びが終わり、死に至ります。この株では、ミトコンドリアDNAが大規模に壊れていました。真核細胞は共生進化の過程で取り込んだ好気細菌に由来する独自のゲノム(ミトコンドリアDNA)をミトコンドリア内に持っています。短寿命の原因遺伝子を特定したところ、この遺伝子がミトコンドリアDNAを正しく維持するために働いており、この遺伝子の異常によってミトコンドリアDNAが徐々に壊され、ミトコンドリアの機能が低下して、細胞の死につながると考えられています。
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埼玉大学 理学部 生体制御学科 准教授 畠山 晋 先生
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