空を羽ばたいて飛ぶメカニズムの解析は始まったばかり

空を羽ばたいて飛ぶメカニズムの解析は始まったばかり

蝶が飛べる理由を解析する

人間は飛行機をはじめとして飛ぶための道具をいろいろつくってきましたが、蝶のように羽ばたいて飛ぶ道具は1つの夢かもしれません。実は、蝶の羽の運動解析は最近始まったばかりです。これは高速度カメラで翅の動きを細かく観察できるようになったことが大きいでしょう。観察してみると、蝶が離陸するときと安定して空を飛んでいるときは翅の動きが違います。また、翅の構造は根元と先のほうでは、柔らかさが異なるのです。それが力学的にどういう意味を持つかを分析する必要があります。翅の周りの空気の流れも飛行機などに使われる固い素材と異なります。特に、飛行機との大きな違いは、翅そのものが動き、しなることです。それが空気の流れに与える影響を分析します。空気の流れをみると、蝶は羽ばたきによってかなりの推進力を得ていることがわかりました。
これらのことをコンピュータ上で3次元解析し、蝶が飛べる理由を探っていきます。目標は、蝶のように羽ばたいて飛ぶロボットを造ることです。しかし、蝶とまったく同じものを造るのは複雑すぎて不可能です。羽ばたいて飛ぶことのエッセンスを取り出し、できるだけシンプルにそれをロボットに反映させるようにします。

次は蝶のように細かな動きのロボットをめざす

実は、このような方法で蝶型ロボットを飛べるようにすることは成功しています。このロボットは、方向転換や上昇、下降は、羽の動きだけで行うことができます。これは、羽に使う素材の特性を生かすことで成功しました。実際の蝶を見ればわかるように、その動きは実に機動性に富んでいます。短い距離を低速で移動し、同じ場所にとどまり、スピードを出して飛翔する、また方向転換を自由に行うといった細かな動きをしています。目標は、この動きをロボットに行わせることです。飛行機は速いスピードで移動することを可能にしました。蝶型ロボットは、それとは違い細かな動きで空間を自在に移動することを可能にするでしょう。

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九州工業大学 情報工学部 知的システム工学科 教授 渕脇 正樹 先生

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先生が目指すSDGs

メッセージ

私がふだん学生に言っていることは、何でも一生懸命にやりなさいということです。一生懸命やれば、そこから何かが見えてきます。もしかしたら今あなたは、物理や数学は何のために勉強するのだろうと疑問に思っているかもしれません。しかし、大学に行ってロボットの研究をしてみると、物理や数学がいかに大切かが分かってきます。私も学生時代は、まじめな学生ではありませんでしたが、研究をやり始めてそのことに気づきました。何事にも一生懸命に取り組んでください。

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九州工業大学情報工学部は1986年に創設された日本初、現在も国立大学で唯一の情報工学部です。知能情報工学科、情報・通信工学科、知的システム工学科、物理情報工学科、生命化学情報工学科の5学科があり、それぞれの分野において、高度な専門技術を身につけた人材を養成します。これまでに1万人を超える情報通信技術者を生みだし、様々な分野で日本の情報通信革命を支えています。