世紀の発見!? 太古の微化石から生物誕生の謎に迫る

世紀の発見!? 太古の微化石から生物誕生の謎に迫る

ストーリーが書き換えられる発見!

46億年前に地球は誕生し、生物は40億年前に出現したと言われています。これまでは、最初にバクテリアのような細胞の中に細胞核を持たない「原核(げんかく)生物」が登場し、それから約20億年を経て細胞核を持つ「真核(しんかく)生物」が生まれたというストーリーでした。しかし、このストーリーを書き換えることになるかもしれない非常に珍しい微化石が先頃、34億年前の地層が分布する西オーストラリアで発見されたのです。

微生物のタイムカプセル・微化石

微化石とは、例えばミジンコや花粉といった顕微鏡でやっと姿が見られるような、小さな化石の総称です。30億年以前の地層からこれまで発見された微化石のほとんどは数ミクロンと小さく、形態も単純なことから原核生物だと考えられてきました。一方20億年以降の地層からは、20ミクロン以上で、形態も複雑な微化石が産出し、真核生物と考えられるものが含まれます。ところが今回、34億年前の地層で発見された微化石は、大きいものでは80ミクロンもあるうえ、形態も現在の緑藻類によく似た数珠(じゅず)状のものや、紡錘状のものなどさまざまなのです。この様子からすると真核生物である可能性が高いのですが、残念ながら決定的な証拠は見つかっていません。しかし、この発見により太古代(25億年から38億年前)の生命初期進化研究に新たな光が射したのは確かです。

地球の石から火星の進化を考える

また、このように地球上の生物がいつ生まれ、どのように進化していったのかを調査・研究することは、ほかの惑星に生物がいた可能性を探る手立てにもなり、宇宙生物学という新しい学問分野の中に位置づけられます。火星にはしばらくの間、水があったとされていますが、もし34億年前の微化石が真核生物であったとすれば、生物の出現から6億年で大進化を遂げたことになります。ということは、火星にもそれなりに進化した生物がいたとも考えられます。46億才の地球はまだまだいろいろなことを教えてくれそうです。

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名古屋大学 理学部  教授 杉谷 健一郎 先生

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宇宙生物学

メッセージ

宇宙生物学は惑星に探査機を飛ばしたり、ほかの惑星に人を送り込んでサンプリングをしたりするというようなことまでを視野に入れた学問分野です。地球の石の研究は、火星に行って生命の痕跡を探すことのベースになっていると思って私は研究をしています。この学問分野は海外の方がはるかに認知度は高く、また、研究も活発に行われているので、いろいろな国の人と共同で研究することも可能です。古い時代の化石を調べることから、生命の起源や初期進化の謎を解いていくという方法で、地球にいても宇宙生物学の研究はできるのです。

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