耳・声・音が織りなす世界! 音と聴覚の不思議を解き明かす

音声の表現力を科学する
人間の声にはさまざまな「表現力」があります。同じ言葉でも優しい声と力強い声とでは、聞き手の印象が大きく異なります。現在の音声合成技術では、特定の人の声を再現できても、その声の性質を変更することはまだ困難です。声の性質を録音・分析し、特徴を定量化する研究が行われており、少量のデータから声の特徴を効率的に抽出して、性質を制御できる技術開発が進められています。将来的には、感情表現豊かな音声合成システムが実現し、介護や教育支援など多様な分野での応用が期待されています。
耳の形が決める音の聞こえ方
人間の聴覚システムには、音の方向を正確に特定する能力があります。この能力の基盤となるのが、耳の形状です。人によって異なる耳の形状は音の周波数特性に影響を与え、独自の「聞こえ方」をもたらします。音が耳に到達すると、耳の形状による反射や共鳴によって音源の方向や距離の情報が生じます。脳はこれらの違いを処理し、視覚情報なしでも360度の音源定位が可能です。現在はコンピュータシミュレーションによる音波の視覚化技術を活用して、この現象の解明に向けた研究が進められています。この研究は立体音響技術の基盤となり、人間の聴覚特性に合わせた自然な音体験の実現に貢献しています。
音楽演奏を分析する
音楽信号処理は比較的新しい研究分野で、近年始まった取り組みです。この研究は、録音された音楽演奏から演奏者の情報を自動的に抽出・分析することをめざしています。音声の研究と音楽の研究には共通する要素があり、「表現力」がキーワードです。両分野とも、表現力を解析し、特徴を抽出することが目的です。例えば、世界のトップピアニスト数名の録音演奏を解析・比較する研究では、どのように楽譜通りの演奏から逸脱しているか、つまり芸術的逸脱、と関係する表現力特徴を抽出して定量化する手法が用いられています。サイエンスと芸術の両面を持つこの研究は、音楽教育や演奏支援など、将来的にさまざまな応用が期待されます。
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