多様性を考える:古代哲学の視点から

多様性を考える:古代哲学の視点から

多様性の尊重

現代社会では「多様性の尊重」が重要な主張です。私たちは、人それぞれの価値観や考え方を尊重し合うことを大切にしています。しかし、すべてを「人それぞれ」と考えると、対話や議論の意味が失われるとも言えます。何らかの絶対的な基準が一切存在しない状況では、自分の意見を述べることすら意味を持たなくなるように思われます。

古代哲学の視点

では、古代ギリシアの思想家たちはどのように考えていたのでしょうか。ソフィストのプロタゴラスは、「万物の尺度は人間である。あるものにとってはそれがあることの、あらぬものにとってはそれがあらぬことの」と述べました。これは、物事には唯一絶対の視点や価値観はないという「相対主義」の立場です。私たちも、あるものが「美しい」とか、ある行為が「正しい」とか判断する場合、その判断が相対的であると考えることが多いでしょう。
一方、プラトンはこの相対主義に強く反論しました。彼は「絶対に揺るぎない価値観」が存在するからこそ、対話や議論が成立すると主張しました。これがプラトンの有名な「イデア論」です。プラトンにとって、イデアは現実の不完全さを超越した絶対的な存在であり、それに基づく価値観こそが真の基準だと考えました。
この対立は、価値観や判断基準の根本的な問いに繋がり、現代においても議論の基盤となっています。

AIと古代哲学

このように、古代哲学の議論は問題の根本にまで立ち返り、その解決に向けて大きなヒントを与えてくれます。哲学の根本問題に直球で向き合うところが古代哲学の魅力です。だからこそ、印刷技術もない2400年前に考えられた事柄が、手間をかけて手書きで書き写され、現代まで伝えられてきたのでしょう。
一方で、現代の一般人にとって古代哲学をはじめとする西洋古典は難解な書籍です。そこで最近の研究では、AIが西洋古典を参照し、出典も示してくれるシステムが開発されています。将来的には、プラトンやアリストテレスに気軽に考えを尋ねられるようになるかもしれません。

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名古屋大学 文学部 人文学研究科 人文学専攻 哲学 准教授 岩田 直也 先生

名古屋大学 文学部 人文学研究科 人文学専攻 哲学 准教授 岩田 直也 先生

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思想史、西洋古代哲学

メッセージ

私は音楽が好きで、学生時代にはバンド活動に打ち込んでいました。本当に熱中していたので、「音楽とは何だろう」と突き詰めて考えるようになり、その疑問を解決するために哲学を学び始めました。あなたにも、まずは自分が心から楽しめることを見つけてほしいです。さまざまなことに挑戦して、自分が情熱を注げるものを探してください。きっとその中から、学びたいことが自然に見つかるはずです。

名古屋大学に関心を持ったあなたは

名古屋大学は、研究と教育の創造的な活動を通じて、豊かな文化の構築と科学・技術の発展に貢献してきました。「創造的な研究によって真理を探究」することをめざします。また名古屋大学は、「勇気ある知識人」を育てることを理念としています。基礎技術を「ものづくり」に結実させ、そのための仕組みや制度である「ことづくり」を構想し、数々の世界的な学術と産業を生む「ひとづくり」に努める風土のもと、既存の権威にとらわれない自由・闊達で国際性に富んだ学風を特色としています。この学風の上に、未来を切り拓く人を育てます。