運動能力向上の常識が変わる? 電気刺激の未知なる可能性

産声をあげた電気刺激とスポーツの研究
スポーツにおけるパフォーマンス向上の最も重要なファクターは筋力トレーニングであり、長きにわたってメインストリームとして多くの研究者がトレーニング方法やメカニズムを議論してきました。しかし、将来的に筋力トレーニングに取って代わる可能性を持つ研究が今まさに産声をあげつつあります。それが現在注目を集めはじめている「電気刺激によるパフォーマンス向上」の研究です。
トレーニングの概念を覆す可能性
人は脳からの指示を電気刺激として筋肉に伝達することで動作を実現します。この研究ではその電気刺激を外部からより効果的に、より適切なタイミングで脊髄に加えることで、本来持つパフォーマンスを最大化させるという目的でスタートしました。
医療においては脳卒中や脊髄損傷で障害を負った人に対して、電気刺激を加えることで運動機能の向上につながったケースが実証されていますが、スポーツへの応用は世界的にも未開拓の研究分野です。もしこれが実現できた場合、これまでのトレーニングの概念を覆すようなパラダイムシフトになることは確実です。例えば、これまで地道に数カ月かけて取り組んできた筋力トレーニングの効果を、わずか数回の電気刺激によって生み出せる可能性もあるなど、この研究は未開拓ゆえの、特大の可能性を秘めているのです。
すそ野拡大と、健康寿命にも寄与
そして、これはごく一部のトップアスリートだけが恩恵を得るものではありません。「これまで地方にいて指導体制や環境の差によって埋もれていた若い才能を発掘・育成する」「高齢者の運動機能低下の抑制に寄与する」といった可能性を含んでいます。スポーツをする人のすそ野を広げるとともに、そのレベル自体を一段階押し上げて、健康寿命の向上という観点でも大きな好影響をおよぼす研究です。スポーツ分野はもちろん、社会全体においても大きなイノベーションとなることは間違いありません。
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東京工科大学 医療保健学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻 講師 斎藤 寛樹 先生
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スポーツ理学療法、ニューロメカニクス先生が目指すSDGs
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