経営学の力で「食品ロス」を減らし、持続可能な社会を築こう!
大量の食品ロス
本来食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」が日本でも多く発生しています。「もったいない」のはもちろん、運搬や焼却を通じて大量の二酸化炭素が排出されることから、世界中で大きな問題となっています。日本の食品ロスの半分以上は、事業活動の中で発生しており、特に食品製造業・卸売業・小売業から成るサプライチェーン(商品が消費者に届くまでの一連の流れ)で大量の食品が廃棄されています。その背景には、食品流通業界における社会的な課題があります。
協働と競争のバランス
食品業界には、食品の納入期限を賞味期限の3分の1以内とする商慣習があります。たとえば、賞味期限が製造日から3カ月の場合、小売店には製造後1カ月以内に食品が納品されなければいけません。近年では業界の努力もあり、この期限を2分の1に緩和する事業者も増えています。他にも、情報システムを業界で統一して余計な手間を省く、取引コストを見える化する、といった議論が進められています。流通過程で在庫状況をリアルタイムに共有できれば、消費ペースに合わせて製造量を適正化するなど生産の無駄を削減することが可能です。こうした業界の変革には企業間協働が不可欠ですが、競合との協働を不安視する声も少なくありません。
合意形成を促すデジタル社会実験
経営課題に対する解決策をシミュレーションすることで、結果のメリット・デメリットを提示できます。たとえば業界全体での標準化推進はコストを下げ、より付加価値の高い事業に経営資源を傾けることに役立つ一方で、莫大な投資を伴います。シミュレーション(デジタル社会実験と呼ばれています)によって経営者は多面的かつ定量的に物事を捉えながら意思決定を行うことができます。サプライチェーンの問題で個社にできることは限られていますので、互いの影響を確認しながらの合意形成が不可欠です。こうした経営学の働きかけにより企業の相互理解が深まれば、食品ロスの削減を始め持続可能な社会の実現に向けた大きな一歩となるでしょう。
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