アインシュタインの最後の宿題、重力波の直接観測に挑む

アインシュタインの最後の宿題、重力波の直接観測に挑む

相対性理論と重力波

アインシュタインの唱えた相対性理論では、時間と空間は一つの概念であり、「時空」と呼びます。時空は一定ではなく、伸びたり、縮んだり、ゆがんだりします。それらがはっきりと現れるのは、光速の数分の1といった速い速度で動く場合や、大きな(強い)重力がある場合などです。
宇宙で強い重力場をもつ天体は、ブラックホールや中性子星、超新星の核などです。これらの天体の運動や変形によって、周囲の重力場は変化し、時空はゆがみます。アインシュタインは、そのゆがみがさざ波のように宇宙空間を伝わるはずだと予言しました。この波を「重力波」と言います。

観測が続く重力波

重力波は1916年に予言されました。天体の観測による間接的な証明はありますが、直接の測定はまだなされていません。重力波を見つけ出すために、現在世界各国で観測が行われているのです。重力波による時空のゆがみはとても小さく、大きな検出器でないと観測できないため、一辺が数百メートルから数キロメートルといった規模の設備で観測が続けられています。

重力波を観測する方法

この大きな検出器は「レーザー干渉計」と言い、原理は次のようなものです。
光をビームスプリッターと呼ばれる半透明鏡で90度の2方向に分け、それぞれを鏡で反射させて再び一つに戻します。このとき重力波で途中の時空にゆがみがあれば、一つになった光の波長の山と谷がずれて干渉(二つ以上の波の重ね合わせによる明暗の変化)し、もとの明るさになりません。光の波長を基準に距離の変化を測ることができるのです。ただし微小な信号から重力波を取り出すのは困難で、高度なデータ解析が求められます。
この研究には二つの大きな意義があります。一つはアインシュタインの相対性理論の検証です。科学では、どんな理論も実験的な検証を経て正しいことを確かめます。また、重力波が検出できれば、ブラックホールや超新星などのことが詳しくわかるようになります。それは天体物理学を大きく進歩させることでしょう。

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先生情報 / 大学情報

大阪公立大学 理学部 物理学科 教授 神田 展行 先生

大阪公立大学 理学部 物理学科 教授 神田 展行 先生

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物理学、宇宙物理学、天文学

メッセージ

私は研究で、天体からの「重力波」の観測をめざしています。重力波はまだ見つかっていませんが、おそらく今後10年のうちには検出されるだろうと言われています。これは、この分野に興味のあるあなたにとってグッドタイミングです。なぜならあなたが本格的な研究を始める時期に重なるからです。ですからぜひ野望を持って挑んでください。
しかしこの分野は、物理学の基礎や天体現象自体を知らないとスタートラインにも立てません。日頃からいろいろな本や雑誌で貪欲に知識を増やしてください。

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2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学が誕生しました。大阪市立大学、大阪府立大学は共に約140年の歴史ある大学であり、水都として交通の要衝であった大都市大阪とともに発展してまいりました。この地の利を生かし、理論と実際を有機的に結合することにより、両大学は大都市大阪で生活する人々が必要とする精神文化の発展や産業と経済の振興を担う中心機関としての役割を果たしてきました。本学はさらなる異分野を融合・包摂した新たな学問の創造と多様な世界市民の育成を目指します。