DVDや「1秒の定義」にも利用! 「レーザー」の原理とは?

DVDや「1秒の定義」にも利用! 「レーザー」の原理とは?

「レーザー」という言葉の意味

レーザーポインターやDVDに利用されているのがレーザー技術です。レーザー(Laser)は“Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation”の頭文字を取ったものです。日本語訳は「輻射の誘導放出による光の増幅」です。“Light”を“Microwave(マイクロ波)”に置き換えたメーザー(Maser)という言葉もあります。

レーザーの原理「誘導放出」とは

ここに出てくる「誘導放出」という概念はアインシュタインが最初に唱えたものです。
原子はとびとびのエネルギー状態を持ち、一番エネルギーの低い状態を基底状態、それ以外のエネルギーの高い状態を励起状態といいます。アインシュタインは、原子が励起状態にある場合、何もしなくても自然に光を放出して基底状態に戻る「自然放出」と、外から光がやってきたときにそれに揺さぶられて、その光と同じ方向と位相で光を出す「誘導放出」の二つを考えなくてはならない、と主張しました。

レーザーの仕組みとレーザー研究の応用

光の元には振動する電子があります。そして光の性質は、光を出す物質の性質に依存します。太陽や電球などから発せられる通常の光は、物質中の個々の電子が独立に光を放出するので、波の位相も方向もバラバラです。それに対し、誘導放出という過程を積極的に利用する光源がレーザーです。レーザーでは誘導放出を利用して物質中の電子を同じ振動数と位相で振動させ、指向性がよく位相がそろった光を作り出すのです。
この原理が実現したのは1954年のことでした。アインシュタインが1917年に理論を発表してから30年以上、だれもが実現不可能だと思っていたのです。
現在は、DVDなどの製品への応用のほかに、レーザーを利用して原子を冷却する実験なども、世界のいろいろな研究所で行われています。そして、冷却した原子を使って「1秒の定義」を書き換えようという動きも進んでいます。

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先生情報 / 大学情報

東京大学 教養学部 統合自然科学科 准教授 鳥井 寿夫 先生

東京大学 教養学部 統合自然科学科 准教授 鳥井 寿夫 先生

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光学、電磁気学、量子力学

メッセージ

私が学んだ海外の大学の研究室は、先生の部屋も含めてカギは共通で、ドアはいつも開かれていました。これはいつでも部屋に入ってきてディスカッションを始めてもいいというスタンスです。これは物理的なドアですが、心のドアも同様でした。あなたにも、常に心のドアを開けていてほしいと思います。
そして、たとえ身近なものでも、「これはなぜこうなっているんだろう?」という素朴な疑問を持ち続けてください。ばかばかしい疑問など世の中にはありません。素朴な好奇心は研究の原動力なのです。

東京大学に関心を持ったあなたは

東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。