行動を科学すると、ストーリーが見えてくる

行動を科学すると、ストーリーが見えてくる

「誰が」が重要

人の行動を数値化し、分析すると、対象となる人々の求めていることが見えてきます。それを知る手掛かりはPOSデータです。これは「ポイント・オブ・セールス(販売時点)」の略で、レジを通して、いつ・どこで・何が・いくらで・どれだけ売れたか、といったデータが集計されていきます。これに「どんな人が」という要素が加わると、より効果的なマーケティングが行えるのですが、ひと昔前まで個人を特定する技術は確立されていませんでした。ID付きPOSシステムが誕生し、その膨大なデータを瞬時に処理できるようになったITの進化が、マーケティングの可能性を広げたのです。

特典の見返りに情報を

ID付きPOSデータとは顧客会員カードから得られる情報です。クレジットカードやデパートのメンバーズカード、会員証やポイントカードも個人データの発信源となります。こうしたカードは、割引やポイントサービスが受けられるため消費者にとって魅力的ですが、小売店側にとっても顧客の詳細な購買行動を把握できるところがメリットになるのです。複雑な数式や三次元座標などを用いてデータを分析すると、ストーリーが浮かび上がってきます。

科学の力で鷲づかみ

ファッションにこだわりを持つ男性が、百貨店のフロアを自由に行き来しながら、さまざまなブランドのアイテムを手にコーディネートを楽しむ、これは、解析の結果見えてきたニーズ=ストーリーの一例です。これを形にした例を、百貨店の伊勢丹に見ることができます。2003年、新宿にリニューアルオープンした紳士服の専門館は、ブランドごとの間仕切りをなくしたことで、開放的な空間が好評です。
一人暮らしの女性が、会社帰りにレンタルビデオ店とコンビニに寄り、買ってきたアイスを食べながら、借りてきた海外ドラマを見てくつろぐ、という行動=ストーリーから、レンタルするとアイスの割引券がもらえるキャンペーンが生まれることもあります。マーケティング・サイエンスとは、科学で顧客の行動をつかむ手法なのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京都立大学 経済経営学部 経済経営学科 准教授 中山 厚穂 先生

東京都立大学 経済経営学部 経済経営学科 准教授 中山 厚穂 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

行動計量学、社会心理学

メッセージ

私はマーケティング・サイエンスを研究しています。これは文字通り、「マーケティングを科学する」学問です。具体的には、消費者がどういった購買行動をとっているのか、目に見えるよう数値化し、分析しています。例えば、あなたの身近にあるコンビニエンスストアやスーパーマーケットでは、どのような経営戦略がとられているのでしょうか。こうしたことを計量的な切り口で見てみると、これまで気がつかなかったことが見えてきます。興味があれば、ぜひ学んでみてください。

東京都立大学に関心を持ったあなたは

東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。