建築構造の視点から団地問題を考える
憧れの住まいから住みにくい老朽住宅へ
高度経済成長時代、大都市の郊外を中心に、「プレキャストコンクリート構造」の団地が建てられました。プレキャストコンクリートとは、工場で事前に成形されたコンクリートで、現場ではプラモデルのように簡単に造れるというメリットがあります。
団地が建てられた当時は、憧れの住まいだったわけですが、30年も経つと老朽化やライフスタイルの変化により、住みにくくなってきました。エレベーターがなかったり、天井が低かったり、部屋の広さも50平方メートル前後と子どもがいる家庭には手狭なため、若い世代は引越しをし、高齢者だけが残るという団地が増えています。
大幅改修で住みやすい住宅へ
こうした古い団地は取り壊し、建て替えるというケースもありますが、一方で大幅な改修をして使おうという動きもあります。例えば、壁など部屋の仕切りを取り壊し、間取りを変更したり、1戸あたりの面積を増やしたり、断熱設備を設置したり、大がかりなものでは床を抜いてメゾネットタイプにするといったことです。現在は、こうした改修により建物の強度が落ちないかなどを調査するのに時間がかかっており、まだ一般的とまではなっていない状態ですが、今後大幅な改修は普及することが予想されます。
若者が入居すれば団地に活気が戻る
残念なことに、高度経済成長期の建築物には、水増ししたコンクリートが使われるなど、違法な手抜き工事が多々行われていたことも事実です。しかし団地は、事前に工場で成形されるため、建設現場で不正ができないことから、しっかりした材料を使用し、極めて頑丈に造られています。また、最近建てられたマンションなどよりも周囲の緑が豊かだったりします。
大幅な改修は、建て替えに比べ費用を抑えることもできますし、住みやすい住居にすることで、若い世代が団地に戻ってくることも考えられます。若い世代が入居することは、団地が活気を取り戻すことにもなるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 都市環境学部 建築学科 准教授 高木 次郎 先生
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