茶道の盛衰と運命を共にした村 人と環境の最適な形とは

人間と環境との関係を最適化するプロセス
「環境デザイン論」は、都市の課題を解決し、快適に暮らす空間を作るための研究です。人間の居住地は、住みやすい環境を作るために、地形や気候、生き物などを選んで発展してきました。例えば、京都の場合は8世紀に「風水」の考え方をもとに作られました。街の配置は、東にある川や北にある山、南にある湖などの地形を考慮して決められました。環境デザイン論では、都市を単体で見るのではなく、その外側にある要因にまで注目して研究が進められています。
国内の木材消費の移り変わり
1960~1970年代の経済成長時には、人々が急速に都市に集中し、それに伴って水・食料・エネルギーなどの資源が大量に集められ、使われました。日本は、1960年代まで国内の森林で産出した木材を使っていましたが、それ以降は東南アジアやカナダから輸入した木材を使うようになりました。その結果、使われなくなった日本の森林の質が下がり、林業が衰退してしまいました。現在の都市を取り巻く環境や問題を解決するためには、周辺地域との関係に加えて、都市が形成された歴史的な経緯を理解することが大切です。
茶道文化の盛衰を共にした村
「環境デザイン論」の調査では、フィールドワークと文献調査を組み合わせた方法が用いられます。具体的には、過去の都市計画の資料を分析して、現地の住民へのインタビューを行います。例えば木材に着目した、京都の「北山杉」に関する研究があります。「北山杉」は京都の北山で産出される杉で、500年以上の歴史を持ち、茶道文化と共に発展してきた木材です。しかし近代的なライフスタイルの中で、茶の文化が廃れ、北山杉で床の間を作る伝統が失われつつあります。その結果、集落の衰退をまねき、森林景観の将来的な維持を困難にしています。京都の都市システムの変化が、北山の景観に影響を与えているのです。こうした状況は、地域資源の「適切な利用」が都市の持続可能性に重要であることを示しています。
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