文化を守りながら住み続けるには 京都・堀川団地の挑戦

文化を守りながら住み続けるには 京都・堀川団地の挑戦

貴重な団地

京都府にある堀川団地は、戦後に建てられた鉄筋コンクリート造の集合住宅です。この場所には、かつて堀川京極という商店街がありましたが、戦時中の延焼対策として行われた建物疎開により、すべて取り壊されてしまいました。戦後、街の再建を望む住民の声を受けて1950年に建設されたのが堀川団地です。京都の大工たちが初めて手がけた鉄筋コンクリート造であり、内部には木造建築の伝統的な技術も取り入れられた貴重な建築物です。しかし、現在の耐震基準を満たしていないため、一部はすでに取り壊されてしまいました。

文化を守りながら住み続けるために

現在、堀川団地では再生に向けた取り組みが進められています。この地域は、もともと西陣織の職人たちが多く住んでいたことから、「アートと交流」をテーマに、地域の文化や暮らしを生かした再生をめざしています。
ただし、古い建物の保存は、現在の住宅基準をどう満たすかが大きな課題です。例えば、家を夏は涼しく、冬は暖かく保つための断熱は、通常は外壁の外側に施します。しかし、古い建築物にそれを適用すると、外観が変わってしまいます。そこで、建物の内側にもう一つの空間をつくる「入れ子型構造」という方法が研究されています。内側の建具に断熱効果をもたせることで、外観を保ちながら省エネに近づける試みです。

文化と暮らしを未来へつなぐ

大切なのは、現行の法律や基準をそのまま適用するのではなく、地域の文化を守る視点で柔軟に考えることです。例えば、木造町家が多く残る京都の花見小路では、実際には現行の防火基準を満たしていません。舞妓(まいこ)を含む住民たちが日常的に放水訓練やバケツリレーに参加することで、特別に基準が緩和されているのです。
堀川団地でも、耐震基準に満たない中でどのように安全を確保するかが課題となっており、住民の工夫や地域のルールづくりが求められています。こうした模索をすることが、住まいの「文化的持続可能性」を高めることにつながります。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

京都美術工芸大学 建築学部 建築学科 教授 生川 慶一郎 先生

京都美術工芸大学建築学部 建築学科 教授生川 慶一郎 先生

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建築学

先生が目指すSDGs

メッセージ

建築を学ぶには、実際に多くの建物を見て感じることが一番大切です。美術館や博物館、お寺など種類を問わず、まずはその建物を見て、解説を読んで理解することから始めましょう。そしてさらに大切なのは、自分の感性を言葉にすることです。「いいな」や「カッコいい」という単純な表現で終わらずに、なぜそれが魅力的なのか、具体的に説明してみてください。建築には独自の視点が必要です。たくさんの建物を見て、自分の言葉を増やしていくことが、建築を深く理解する第一歩につながります。

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本学は2012年に開学し今年で11年目を迎えました。キャンパスがある京都東山は京都駅から徒歩圏内で、近くには有名な寺社仏閣や文化施設などが点在する京都を代表する観光地にあります。本学は「建築学部建築学科」と「芸術学部デザイン・工芸学科」の2学部2学科からなり、伝統と先端が融合する都市「京都」で、建築と芸術をはじめとする複数の視点から学びを深めることで、これまでにないクリエイティブを生み出す力を身につけることが可能です。また、グループ校との連携により、建築士資格が在学中に取得できることもできます。