観測装置も自分で開発! X線で挑む宇宙の未知なる世界
目には見えない宇宙の不思議をとらえる
宇宙からは可視光のほか、電波や赤外線、X線などさまざまな電磁波が降り注いでいます。目には見えない波長が起こす現象をとらえられれば、知られていない宇宙の姿が見えてくるでしょう。このうちX線は高温、高いエネルギーを放出する様子を示しますが、大気に吸収されるため地上からは観測できません。現在は人工衛星に装置を搭載し、宇宙から観測するのが一般的になっています。
X線で見える「木星のオーロラ」「地球の磁気圏」
木星ではX線の波長域で、大規模なオーロラが観測されました。これは木星の強い磁場の中で、粒子が何らかの方法で光に近い速さまで加速され、木星の大気に突っ込むときに発光すると考えられています。
地球の磁気圏も、磁場そのものは可視化できませんが、X線を使うと磁場に沿った粒子の運動がとらえられると考えられます。かつてX線で地球の探査を行っていたドイツの衛星「ROSAT」の観測データには、正体不明のノイズが含まれていました。日本の「すざく」衛星などを使った最新の研究の結果、ノイズは太陽風が地球磁気圏に捕捉され、地球周辺の物質と電荷交換反応を起こして出る放射が原因だとわかりました。このようにX線を活用した観測で、宇宙物理学の理解が進んだり、さまざまな基礎物理の知識が得られたりしているのです。
自分の手で装置を生み出し「世界初」をめざす
歴史をたどれば、太陽以外でX線を放出している天体が見つかったのは、1962年、アメリカの大学発の今でいうベンチャー企業の若き科学者たちが中心となって作った装置によるものでした。同じように自分たちの手で装置を開発し、新しい発見をしようという試みは今も続いています。重さが100kg以下という超小型衛星の開発も進んでおり、これまで大型衛星が行ってこなかったエリアの探索などを行おうとしています。思いがけないことから、宇宙の謎を解き明かすヒントが見つかることもあります。そのチャンスを逃さないためにも、自分で観測装置を開発する意義は大きいのです。
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先生情報 / 大学情報
東京都立大学 理学部 物理学科 准教授 江副 祐一郎 先生
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