未来を予見して社会を支える、新たな土木工学とは?
まちづくりまで考えた建造物の設計
私たちが暮らす社会は、ビルや民家などのさまざまな建物をはじめ、道路、橋、堤防、港、空港など、土木工学の技術によって形作られた建造物によって成り立っています。それらの建造物を建設する際、従来は、その建造物単体で最適な形態になるように設計するのが一般的でした。しかし近年は、周辺との関係性やまちづくりまで考えた上で設計すべきと考えられるようになっています。
複合的な研究と知見による新しい土木工学
地球上の多くの土地は、自然災害と常に隣り合わせです。また長期的には気候変動や、建材の老朽化なども考慮しなければなりません。例えば、災害で橋が壊れたり、堤防が崩れたりしたとします。それが街や住民にはどのような悪影響が及ぶのか、その悪影響を防ぐか最小限に留めるためには、どのような対策を講じればいいのか。現在の土木工学の分野では、こうした建造物と社会との関係性まで、綿密に検討することが求められています。そのためには、構造力学や土質力学、水理学、土木計画学など、伝統的な学問分野を基にしつつも、それらに捉われずに、複合的な研究と知見によってまちづくり全体の設計を進めていく必要があります。こうした社会との結びつきを強めた新しい土木工学の分野は、「先端社会基盤学」とも呼ばれます。
鍵を握るデータサイエンス
先端社会基盤学で鍵となる分野の一つは、データサイエンスです。例えば、地震計などのセンサをどのように配置し、どのようなデータを取り、それらをアルゴリズムによってどう分析して街全体での地震対策を講じていくか、といったことです。近年は、このデータサイエンスの分野でのアルゴリズムの進歩が著しく、従来では考えられなかった規模と精度での計算が可能になりました。状況によっては、建造物をあえて作らずに災害を未然に防ぐこともできるようになるかもしれません。先端社会基盤学は、私たちの社会がより良い方向にかじを切っていくための新たな道標になるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
東北大学 工学部 建築・社会環境工学科 准教授 大竹 雄 先生
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土木工学、先端社会基盤学先生が目指すSDGs
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