タンパク質の働きを知ると生物の神秘が明らかになる
タンパク質は細胞の活動を司る働きをもつ
タンパク質は、人間の身体に必要な「栄養」というイメージがありますが、その正体を解き明かしていくと、タンパク質の「働き」が生命に重要であることがわかってきます。筋肉を動かしたり、ものを考えたりといった人間の活動もまた、タンパク質という分子の働きによるものです。例えば、筋肉が動くというのは、ゴムのように筋肉が収縮しているように見えますが、分子のレベルで見ると、二つのタンパク質が滑りあっています。細胞が運動し分裂・結合する現象でも同じタンパク質が働いています。このように、生物を分子の働きやかたちの視点から研究する学問を「分子生物学」や「構造生物学」と呼んでいます。
ところで、なぜタンパク質の働きがわかったのでしょう。細胞の構造が解明されるなかで、筋肉が動くということを分子で説明しようとすると、力を加える存在としてタンパク質が重要だということが明らかになりました。それだけでなく、数十ナノメートル(1億分の1メートル)という大きさのタンパク質の分子の結合・解離の様子を電子顕微鏡で観ることができることで、その働きが証明されたのです。
より本質的に生物の活動を理解する
これは生物の活動を現象面だけからとらえるよりは、一歩進んだ方法です。「筋肉が動く」という現象をただ細かく記述するのではなく、分子レベルで観察し、説明すれば、どのようにして筋肉が動くのかが理解できます。また、なぜそういう動きをしなければならないかもわかるでしょう。このような研究によって、生物の秘密が、少しずつ明らかになってきています。
現在では、コンピュータの進歩によって、電子顕微鏡で得られる2次元の画像を3次元の映像に変換して観ることができます。これによって、タンパク質の構造をさらに微細に観察できます。さらに、その動きをシミュレーションすることができます。これは、新しい自然観察の方法です。コンピュータによって、タンパク質の新たな働きがわかれば、さらに生物についての理解が進むことでしょう。
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九州工業大学 情報工学部 物理情報工学科 教授 安永 卓生 先生
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