作ることはできても、理屈を公式化できない? 不思議な通信の世界

作ることはできても、理屈を公式化できない? 不思議な通信の世界

厚さは半分で性能が数十倍に進化した携帯電話

10年前の携帯電話と、iPhoneなどの現在のスマートフォンを比べてみましょう。大きさ、厚み共に以前の携帯電話の半分以下になっているはずです。それでいて機能は、以前なら考えられないぐらいに向上しています。今のスマートフォンを通話の機能だけ使っている人は、まず少数派のはずです。Webサイトを見たりメールをしたり、写真を撮ったり動画を見たり、もしくはゲームを楽しんだりと、数多くの機能がスマートフォンには備わっています。

下手な鉄砲も数打ちゃ当たる?

携帯電話の進化は、内部の電子回路の進化によるものです。以前なら本体の半分ぐらいの大きさの回路が受け持っていた機能を、今では3ミリ角のシリコンチップが実現しています。ところが回路設計の多くは、実は「やってみたらできた」式の開発手法なのです。すなわち理論的に考えて設計しているのではなく、コンピュータシミュレーションで試行錯誤で計算し、その時点でベストの成績を出したものが採用されています。そのため、今あるパーツや素材を使って、どこまで省電力を実現できるか、あるいは小型化できるかなど限界性能はわかっていません。現在は極めて帰納的な開発手法でありますが、理想は演繹(えんえき)的な開発法を編み出すことです。

携帯通信でハイビジョン動画を送るためには

半導体の世界では「ムーアの法則」がまだ生きています。簡単にいえば半導体の性能は、大体2年ごとに倍増すというものです。そこで携帯電話の開発者たちは、数年先の半導体を予測しながら開発を進めることになります。
今後10年ぐらいで無線通信の速さは100Mbps、今の家庭用光回線ぐらいになるでしょう。そうなると携帯でハイビジョン動画を見ることも可能です。これには60GHzぐらいの無線周波数が必要で、安定した通信を実現するための回路設計が極めて重要なカギとなります。そのためにも電子回路を計算式で表現する研究の成果が待たれるところです。

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先生情報 / 大学情報

金沢工業大学 工学部 電子情報システム工学科 ※2025年設置構想中 教授 伊東 健治 先生

金沢工業大学 工学部 電子情報システム工学科 ※2025年設置構想中 教授 伊東 健治 先生

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電子情報通信工学、通信・情報工学

メッセージ

電子回路ができて100年が経ちます。けれども、多くの電子回路の性能を表す式は未だに確立されていません。私の研究室では、回路を解析し、さまざまな変数を計算に入れて性能を予測する研究に取り組んでいます。これは世界でも最先端の研究で、研究室の学生が国際学会の場で、英語で自分の研究を発表することもあります。英語が苦手だった学生も、そんな発表ができるようになるのは、彼らの能力は本人が思っている以上に高いからです。あなたも、大学での学びを通して本来秘めている能力を開花させてください。

金沢工業大学に関心を持ったあなたは

金沢工業大学では、講義等で「知識を取り込み」、それを仲間との実験・演習の中で「思考・推論」し、組み替え結びつけることで「新たな知識を創造」し、その成果を「発表・表現・伝達」する独自の学習プロセスを全科目で導入しています。さらに高度な研究環境の中で産学協同による教育研究を実践するとともに、夢考房など知識の応用力を高める多彩なフィールドを実現することで、獲得した知識を知恵(応用力)に転換できる「自ら考え行動する技術者」を育成しています。