いつかは壊れるコンクリートを長持ちさせるには?

いつかは壊れるコンクリートを長持ちさせるには?

コンクリートに厳しい日本の環境

コンクリートは、今から9000年前にすでに使われていました。コンクリートを使用した世界最古の遺跡が、中東のイフタフにみられます。条件がよければ何千年ももつ素材、それがコンクリートなのです。
ところが日本は、コンクリートにとって非常に厳しい環境なのです。問題は日本独特の気象条件と島国である、ということです。冬は凍るほど気温が下がり、夏は30数度まで上がる温度差に加えて、雨がとても多いのです。さらに沿岸部は常に潮風にさらされます。そこでコンクリートの耐久性を高める研究が始まりました。

コンクリートの劣化をどうやって調べるか

コンクリート劣化の最大の要因は塩害です。塩分が内部に染みこむと鉄筋が腐食します。ただ、外部からは中の鉄筋の様子まではわかりません。そこで、コンクリートの導電性を利用して電流を使った内部検査の研究が進められています。
また高性能カメラを使って表面を撮影し、その結果を画像分析にかける検査法も研究されています。いずれの方法も電気系や情報系など他分野の学問領域との連携により進められており、完成すれば最先端の技術となるものです。

コンクリート50年寿命説を克服するために

コンクリート製の構造物の寿命は、一般的に50年前後と言われます。これぐらいの年月が経つと、約半数の構造物で補修が必要になるのです。そのため日本では今後、東京オリンピック以降の高度経済成長期に建てられたコンクリートの建物が次々と寿命を迎えることになります。
検査に加えて劣化予防の技術開発も急がなければなりません。例えば表面に撥水系の物質を塗る方法がありますが、これだと塩水ははじくものの二酸化炭素ガスが内部に入りやすくなります。コンクリートはpH12ぐらいの高アルカリ性ですが、二酸化炭素ガスにより酸化が進むとpH値が下がり、結局は鉄筋の劣化につながります。内部の鉄筋の腐食をいかに予防するか、これが今後、コンクリートの最も重要な研究課題となっています。

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先生情報 / 大学情報

金沢工業大学 工学部 環境土木工学科 教授 宮里 心一 先生

金沢工業大学 工学部 環境土木工学科 教授 宮里 心一 先生

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建設材料学、維持管理工学、環境土木工学

先生が目指すSDGs

メッセージ

豊かな生活や高度な経済活動を維持するためにコンクリートは欠かせない素材です。そのコンクリート研究について、金沢工業大学は世界でもトップクラスのレベルを誇り、学部生が国際学会で研究を発表するほどです。日本では今、コンクリートの点検・補修技術の開発が重要な課題です。アジアでは、これからコンクリートを使った建物が数多く建てられるはずで、こうした技術はいずれアジア諸国でも確実に必要となります。機械、電気、物理、化学などの知識を活用して、一緒に新しいコンクリート技術を開発しましょう。

金沢工業大学に関心を持ったあなたは

金沢工業大学では、講義等で「知識を取り込み」、それを仲間との実験・演習の中で「思考・推論」し、組み替え結びつけることで「新たな知識を創造」し、その成果を「発表・表現・伝達」する独自の学習プロセスを全科目で導入しています。さらに高度な研究環境の中で産学協同による教育研究を実践するとともに、夢考房など知識の応用力を高める多彩なフィールドを実現することで、獲得した知識を知恵(応用力)に転換できる「自ら考え行動する技術者」を育成しています。