インド農村社会の変容と女性
女性が果たす役割
家父長制をとる北インドのヒンドゥー社会では、3世代が同居し、20人ほどで生活するのが一般的でした。出産・結婚といった通過儀礼や子どもの成長や夫の長寿、家の繁栄を願い、女性たちが神々に祈り、民謡を歌います。長男は祖先に対する儀礼を中心におこないますが、かまどや井戸などに宿る小さな神様には、毎朝、長男の嫁が中心になって祈りをささげるなど、家庭での日々の儀礼に関しては女性が重要な役割を果たしています。
経済自由化がもたらした社会変化
1991年の経済自由化をきっかけに、インド社会は大きく変化してきました。自給自足的な生活をおこなってきた農村にも消費社会化の波が押し寄せ、人々の暮らしや考え方に影響を及ぼしています。例えば、以前は学校教育においても男子が優先されましたが、2000年代半ば以降は、女子にも教育をという考え方が浸透し、女性の教育レベルが上がりました。また、携帯電話が普及するにつれ、連絡手段ができたことで、遠出には付き添いの男性が必要だったり、実家に帰ることが少なかったりした、女性たちの行動範囲が広がりました。
ライフ・スタイルの変化と格差の拡大
女性の教育レベルが上がり、婚姻年齢も上昇するとともに、ライフ・スタイルも変化しています。便利なキッチン・グッズやスマホを使いこなす女性が増えて、流行を取り入れたサリーを着る若い女性もいます。小学校も出ていない姑たちに比べ、嫁たちは高校や短大以上の学歴を持ち、教育レベルが高く、嫁姑関係も逆転の傾向にあります。また、急激な経済発展により都市部では格差が拡大しており、農村部でも国内外への出稼ぎによって、家屋を新築したり、子どもによい教育を受けさせたいと私立の学校に通わせたりするなど、格差が広がっています。このようなインド社会の変化の状況を理解することは、自分たちのモノサシだけが世界共通の価値基準でないことを知るよい契機になるはずです。
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宮城学院女子大学 学芸学部 人間文化学科 教授 八木 祐子 先生
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