すべての物質の基礎「原子核の世界」の謎に迫る
世界の成り立ちの基礎を解明する
私たちの体も、身の回りにある物質も、すべては100種余りの原子(元素)の組み合わせでできています。水は酸素と水素という2種類の原子から成っていますし、動物の体をつくるタンパク質も原子の集合体です。
では、この原子はどうやってできたのでしょうか。
原子は、原子核と電子からできており、原子核は陽子と中性子からできています。それぞれの原子は、原子核同士が反応することで生まれたことがわかっています。しかし、それは地球上では起こりえません。なぜなら太陽の中心のように非常に高温の中で、しかも高速でぶつかり合うことが必要だからです。それは宇宙空間でなければ不可能です。地上の物質はすべて宇宙に起源があるのです。
現代の錬金術は可能か
では、原子核はどのような環境下で、どのようにぶつかると、それぞれの原子になるのでしょうか。そのメカニズムの解明が進んでいます。
例えば、金(Au)は原子核のどのような反応により生まれるのか、かなりわかってきています。巨大な実験設備で、原子核同士を加速して高速で衝突させると、金の原子ができます。中世の西洋では、錬金術といって、物質を金などほかの物質に変えようという試みが行われましたが失敗しました。現代では実験的に金の原子を作ることは可能です。ただし十分な量を作ろうとすると、鉱山から金を採掘する以上に膨大なコストがかかります。
ミクロからマクロまでの壮大な研究分野
それぞれの原子ができるメカニズムはある程度わかってきましたが、それが宇宙で実際にどのように起きたのかは、まだよくわかっていません。原子核同士がやみくもに衝突してできたわけではなく、宇宙が進化する中で自然の法則に従っていくつかの原子核反応を経由してできたり、超新星爆発により生まれたと推測されていますが、その詳しい中身はまだわかっていません。
この謎を解明することが、原子核物理学の課題の1つです。原子核物理学は、ミクロの世界の探究であるとともに、宇宙の誕生ともかかわる壮大な研究分野なのです。
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