電流を最大化せよ! 高温超伝導材料の開発

電流を最大化せよ! 高温超伝導材料の開発

超伝導の仕組み

超伝導とは、特定の物質を冷却していくとある温度(臨界温度)で電気抵抗が0になる現象です。
通常の導体では、自由電子はプラスを帯びた原子を引き寄せて減速し、エネルギーを失います。これが電気抵抗です。温度を下げると原子の振動が弱まるので抵抗は下がりますが、0にはなりません。ところが、超伝導現象を起こす特殊な物質では、臨界温度を下回ると電子がペアになって動くようになります。そのため、一方の電子が減速して失ったエネルギーをもう片方の電子が受け取って加速するので、ペアで見るとエネルギーの損失は0となり、電気抵抗0で流れることができるのです。

リニアにも使われる超伝導

電気抵抗が0であるため電気エネルギーのロスがなく、超伝導物質のコイルに電流を流すと非常に強力な磁石になります。この超伝導磁石を利用しているのが、リニアモーターカーやMRIです。リニアモーターカーで使われている超伝導材料は「ニオブチタン」という合金で、超伝導状態にするには液体ヘリウムで-269度に冷却する必要があります。液体ヘリウムはコストが高く、大きな装置も必要です。これに対し、安価な液体窒素(約-170度)で超伝導状態が作り出せる「高温超伝導材料」の研究が進められています。

高温超伝導材料を実用化

高温超伝導材料のひとつがイットリウムバリウム銅酸化物などのセラミックスです。超伝導体は電気抵抗が0ですが、流せる電流の量は無限大ではありません。断面積あたりの電流がある値を超えると磁場が生じ、その結果磁束が動いて電圧ができ、抵抗が生まれてしまうのです。この電流の値を「臨界電流密度」と呼びます。高温超伝導材料の実用化には、臨界電流密度を上げることが不可欠であり、その鍵となるのが「磁束ピンニング」という現象です。超伝導体の中に結晶構造の似た不純物を入れることで、磁束の動きを「ピン留め」して抵抗が生じないようにするのです。電流を最大化できるような不純物の探索が進められています。

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熊本大学 工学部 情報電気工学科 教授 藤吉 孝則 先生

熊本大学 工学部 情報電気工学科 教授 藤吉 孝則 先生

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電気電子材料工学

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メッセージ

いま、身の回りにはスマートフォンをはじめ便利な電子機器がたくさんあります。それらをただ使うだけでなく、仕組みがどうなっているのか、機械の中の物理についてちょっとでもいいので考えてみてください。そうしたきっかけで、工学はもちろん、いろいろな科学についての興味がわいてくると思います。超伝導に限らず、ものづくりに興味があり、ものづくりが好きなら、あるいはものづくりで人類の福祉に貢献したいと考えているなら、ぜひ工学部をめざしてほしいです。それが本学であればより嬉しいです。

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熊本大学は、「総合大学として、知の創造、継承、発展に努め、知的、道徳的、及び応用的能力を備えた人材を育成することにより、地域と国際社会に貢献する」という理念に基づき、地域のリーダーとしての役目を果たしています。かつ、世界に向け様々な情報を発信しながら、世界の学術研究拠点、グローバルなアカデミックハブとして、その存在感を高める努力をし、教育においては、累計30件にも及ぶ「特色ある教育プログラム」が優れた取り組みとして文部科学省から認定され、その教育力の高さと質の高い教育内容は定評のあるところです。