地震のときに被害を最小限に食い止める地盤の工夫とは?
地盤の分析から防災対策へ
地盤工学とは、建築物や橋梁などすべての構造物が建つ基礎となる「土」を研究する学問です。土の性質は、場所が100メートル離れるだけで異なることがあります。コンクリートや構造物は、コンピュータで計算して予測しながら分析していくことも可能ですが、土は技術者や研究者が現場に行って実際に見たり触ったりして解釈する必要があり、個人のスキルが重要になってきます。土木の現場管理には欠かせない知識でありながら、まだまだ専門家が足りないのが現状です。地盤の研究でも特に需要が高いのが、地震や大雨による液状化やがけ崩れなど、災害への対策を探る地盤防災工学の分野です。
液状化現象に対する災害制御の方法
大きな地震の際に、「液状化現象」の被害について聞いたことがあるでしょう。液状化とは、地面の下にある地下水の水の粒と土の粒が攪拌(かくはん)され、泥水の中に粒が浮く状態になる現象のことで、その原因には「砂っぽい地盤」「地下水位が高い」「大きな地震」という3要素があります。液状化現象をなくすには、地面をコンクリートなどで固めてしまえばいいのですが、街全体という広範囲に適用するのは、コストの面でも、エコロジーの面でも現実的ではありません。そこでいかに被害を最小限に食い止めるかを模索する研究が進んでいます。
たった一枚の板で被害を抑制できる!
液状化現象が起こると、マンホールや下水管が地表に大きく浮かび上がることがあります。下水管が止まると水が流れず、上水道での水の確保も難しくなりライフラインに影響がでます。また、マンホールが1メートルも浮き上がってしまうと救急車などが通れず、救助活動が妨げられるのです。そこで、マンホールの底のほうにコンクリートの板を1枚差し込むと、液状化した土が下に回りこんで押し上げるのを防ぎ、浮き上がりが15センチ程度まで食い止められることがわかりました。一つの都市に何万・何十万個もあるマンホールに設置するのに、コスト面でも有効な対策として注目を浴びています。
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先生情報 / 大学情報
関東学院大学 理工学部 土木・都市防災コース 教授 規矩 大義 先生
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