複雑な自然現象を、コンピュータグラフィックスで可視化する
自然現象を忠実に再現する
コンピュータグラフィックス(CG)で自然現象を表現することは、決して簡単ではありません。その方法は大きく2つに分けられ、1つは「物理シミュレーション」と呼ばれています。自然現象を物理的に正しく数値化し、それをシミュレーションする方法です。
例えば水や気体などの流体運動では、支配的な方程式として「ナビエ・ストークス方程式」が知られており、この方程式を正しく解くことで、実際の流体の様子をCGで表現することができます。走行する電車や車の周りにどういう気流が発生しているのかを可視化する場合には、物理的正しさが求められるので、この方法が使われます。
リアリティを生み出すには
しかし、正しいはずの「物理シミュレーション」の映像は、逆に、リアリティに欠けることもあります。人間が自然現象に対して持っているイメージが、「物理シミュレーション」の映像と一致するとは限らないからです。また、膨大な計算処理が必要なため、映像化に時間がかかることも、デメリットの1つです。
そこで、人間のイメージと一致させ、しかも計算処理が少ない方法として、「ビジュアルシミュレーション」が開発されました。これには、さまざまなアプローチがあります。
積乱雲を表現する
例えば、積乱雲のダイナミックな動きをCGで表現するときは、パーティクルという粒子を使います。まず、コンピュータ上に三次元空間をつくり、一番下の面を地表とし、地表を分割して、それぞれに温度を定義します。温度の高い地点からは暖かいパーティクルが出て、温度の低い地点からは冷たいパーティクルが出るようにすると、パーティクルが対流運動をします。さらに、対流運動を行っているパーティクルに、ボリュームや色、影をつけるレンダリングを施すことによって、本物の積乱雲がもくもくと湧き上がる映像に近づけることができるのです。
現在では、さらに高度な手法がさまざまに開発されており、CGの世界は日々進化を続けています。
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先生情報 / 大学情報
東京工科大学 メディア学部 メディア学科 教授 菊池 司 先生
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