自由な発想で絵を描こう! 創作の可能性は無限大
詩・書・画は本来、一体の芸術
絵を描く仕事として、多くの人が思い浮かべるのは画家、それともイラストレーターでしょうか? 若い人たちならアニメーターやキャラクターデザイナーかもしれません。現代の職業としては細分化されていますが、絵を描くということは美術の領域だけにとどまらない、もっと幅広い行為なのです。
作品の中に文字があってもいいし、詩歌が詠まれていてもいいし、描いた絵が自由に動いてもいいのです。日本や中国では昔から書画一致の思想があり、絵と文字や文章は、1つの作品の中で共存してきました。詩・書・画は「三絶」と呼ばれ、古来、文人に求められる3つの教養として一体のものだったのです。
画家とは名乗らなかった富岡鉄斎
その思想を体現したのが、幕末から大正の世に生きた日本最後の文人画家といわれる富岡鉄斎(てっさい)です。彼は国学・儒学・仏教などの学者であるとともに、傑出した才能をもつ画家でもありました。ただ、世間にそう呼ばれることで、作品が型にはまるのを嫌ったのか、鉄斎は最後まで自らを「画家」とは名乗りませんでした。彼は絵画の中に「賛(さん)」と呼ばれる詩、歌、文を記した作品を多く残しています。造形面からみれば、漢字も絵のようにグラフィカルな文字ですし、かな文字は、形自体に流麗な筆の動きが表れています。絵と文字の境界は非常にあいまいであり、お互いを引き立てあう要素同士なのです。
アニメーションではない「絵を動かす」方法
また、動きが加わると、絵に新たな生命が吹き込まれます。アニメーションは絵そのものを動かす手法ですが、静止画でも生き生きとした動きを表現することができます。例えば、観客が鑑賞する空間で、作品を即興で描き上げる「ライブペインティング」では、描く者の心の動きがリアルタイムに反映され、躍動感あふれる作品が生まれます。かつての三絶のように、文学や文字、映像などのエッセンスが絵と融合することによって、創作の可能性は無限に広がるのです。
参考資料
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先生情報 / 大学情報
神戸芸術工科大学 芸術工学部 ビジュアルデザイン学科 教授 寺門 孝之 先生
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