ハチの巣も紙オムツも 自然に学び融合するサスティナブルデザイン

ハチの巣も紙オムツも 自然に学び融合するサスティナブルデザイン

自然は、偉大なデザイナー?

私たちが住んでいる家などの建築物は屋根・壁・柱などで成り立っています。一方、ハチの巣は正六角形が重なった「ハニカム構造」で、柱はありませんがつぶれにくく丈夫です。また500系の新幹線の先端は、空気抵抗が少なく、水をはじく形状ですが、実はカワセミのくちばしからヒントを得たものです。さらにカタツムリの殻の表面構造をまねて、汚れのつきにくい外壁材も開発されています。このように生物や自然界の仕組みから学んで、技術や開発に生かすことを「バイオミミクリー(生物模倣)」と言います。

バナナの葉と紙オムツの利用法

環境や建築の分野では、自然の素材を活用する方法もいろいろ検討されています。バナナの葉は、すぐに成長して大きくなり、丈夫で、水をはじく性質があります。それをうまく利用すれば、現状では大半が化学物質でできている建築の断熱材や防湿シートを、バナナの葉に置き換えることも可能です。また、自然界でよく起こる災害を、産業製品を利用して防災することも考えられます。例えば、たっぷり水分を吸収し保水する紙オムツの原理を、地面の下や河川の周囲に使うと、理論上は洪水や砂漠化を防ぐことができるでしょう。

マイナスをプラスに変えるデザインの力

東日本大震災以降、環境や自然の保護に関心を持つ人が増えました。しかし、「環境にいい」だけでは活動も製品も浸透しにくいのが現状で、そこに「楽しさ」「美しさ」といった要素も求められます。
また自然災害の多い日本では、自然と戦うのではなく、上手に受け流して共存してきた歴史があります。現代ならば「CO₂を減らそう」と戦うだけではなく、増えたCO₂を利用して何かできないかとプラスに考える発想も、建築や環境のデザインには大切なのです。マイナスをプラスに変えるのはデザインの力です。自然界に学び、自然界と人間の技術と融合させることで、サスティナブルデザインは生まれてくるのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

静岡文化芸術大学 デザイン学部 デザイン学科 准教授 中野 民雄 先生

静岡文化芸術大学 デザイン学部 デザイン学科 准教授 中野 民雄 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

建築学、環境工学、デザイン学、住居学

先生が目指すSDGs

メッセージ

私の好きな言葉のひとつに、吉川英治の『宮本武蔵』に出てくる「我以外皆我師」があります。目上の人に限らず、年下の人、動物、昆虫、植物など、世の中のすべてが何かを教えてくれます。感謝の心を持ってよく観察すると、自分が成長できると思います。
また、学問の世界はあらゆる分野がボーダーレスでつながっていて、可能性に満ちています。専門がひとつでなくても構いません。高校時代は、何のために勉強するのかと思うかもしれませんが、目の前のことをがんばることが将来、自分の可能性を広げてくれるはずです。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

静岡文化芸術大学に関心を持ったあなたは

静岡文化芸術大学は、文化政策学部、デザイン学部からなる大学です。「文化」と「デザイン」の融合が新しい価値の創造を可能にするという理念のもと、時代の要請に応えられる創造性と実践力を持った人材を育成します。社会に貢献できる人材の育成を目標に各領域を段階的に学び、多方面から物事にアプローチできる力を養う教育を目指しています。
キャンパスは静岡県浜松市の中心市街地に位置します。多彩な産業を擁する地域特性を活かし、企業や公共機関での実習を積極的に取り入れ、学内だけでは得られない貴重な経験を生み出します。