アニメの制作現場とは
日本型アニメ制作の誕生
日本の商業アニメーション制作には、1960年代にアメリカのディズニーの手法を手本とし、東映動画(現・東映アニメーション)によって持ち込まれました。動きがなめらかなのが特徴ですが、当時の日本では予算の制約もあり、中小の会社では東映のように大人数の制作スタッフを集めるのは困難でした。そこで考案されたのが、「コマ抜き」や同じ絵を違うシーンに流用する「バンクシステム」、静止画を生かした「ハーモニー」などの演出です。日本型にアレンジされたアニメ制作の手法によって「鉄腕アトム」などの名作を生み出しました。それらの手法は現代でも用いられています。
アニメ制作業界の構造
現代のアニメ作品の多くは、テレビ局や広告代理店などのスポンサーと、アニメ制作会社のプロデューサーなどによって「製作委員会」が発足し、企画が通った後に監督や脚本家など中心となる制作者の人選が行われます。その後、キャラクター設定や脚本に基づいて、作品の流れを示す「絵コンテ」が作られます。絵コンテに沿って実際の作品づくりを任されるのが、アニメ制作会社です。例えばテレビの30分番組では、CMを除くと22分ほどの作品となり、およそ300カットの絵が必要になります。
分業化された制作現場
日本のアニメ制作会社の特徴は、仕事の分業化にあります。作品は、キャラクターの線画を描く「アニメーター」、線画に色を塗る「仕上」、背景などを描く「背景美術」、キャラクターの絵と背景を合成する「撮影」、全体スケジュールを管理する「制作進行」といった分担で制作が進められます。そのため、納期に間に合わせるチームワークが不可欠です。また、アニメーターには上手さだけなく、多くの枚数を描く速さも求められ、更にコンテ・演出から指示された内容を十分に汲み取った線画を完成させる能力も求められます。個人の描きたい絵を時間をかけて一枚描く「アーティスト」とは異なり、求められた絵を上手く的確に、そして速く多く描ける「プロフェッショナル」であることが重要です。
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先生情報 / 大学情報
吉備国際大学 アニメーション文化学部 アニメーション文化学科 准教授 冨田 聡 先生
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