「絵譜」って知ってる? 絵と音楽のコラボで子どもの音楽世界を描く
音楽をとおして育みたいこと
音楽教育はその一端に、上手に歌える、演奏できるようになるといった技能習得の役割を担っています。
しかし歌や演奏があまり得意ではない、好きではない子どもにとって、音楽が嫌いになってしまう可能性もはらんでいます。無理やりやらされる音楽ほど苦痛なものはなく、大人になってからも記憶に残ります。音楽はそれほど深く人の心に触れるものですから、デリケートに扱わなければなりません。したがって幼児期における音楽教育の根幹は、「音楽とは楽しいものであり、辛いときのよりどころにもなる」と伝えることにあります。
曲の持つ要素をギュッと詰め込んだ「絵譜」の世界
ただ、文字も楽譜も読めない幼児に楽しく歌を覚えてもらうというのは、なかなか骨が折れる作業です。その点で活用できる可能性があるのが絵の楽譜「絵譜」です。ドイツで考案された絵譜は戦後、小学校の音楽教育に導入されました。例えば「かえるの合唱」であれば、音階の上下に合わせて楽しいかえるのイラストが踊っているようなイメージです。色彩と躍動感にあふれている分、曲の世界観を把握しやすく、白と黒の世界である五線譜と比べ親しみやすいのが長所です。楽譜としての正確性には欠けるため、早く五線譜に触れさせたいという学校教育の狙いから今は廃れてしまいましたが、幼児の音楽教育ならば十分活用できるでしょう。
最も大切なのは「観察する」こと
幼児音楽教育において最も大切なのは、子どもを観察することにあります。音楽の好みが千差万別なのは子どもも同じです。目の前にいる子どもがどういう曲を好み、どういう音楽とのかかわり合いを求めているのかを探り、子どもの中から自発的に出てきたものをくみ取って、導くことが大事になります。とはいえ、子どもが知っている音楽はさほど多くはありません。教える側の裁量により子どもの音楽の世界は広がります。曲とのすてきな出会いを演出してあげるのが保育者の務めでもあるのです。
参考資料
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
佛教大学 教育学部 幼児教育学科 准教授 臼井 奈緒 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
幼児音楽、子ども学、教科教育学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?