世界の内戦を終結させるヒントが「西南戦争」にあった

世界の内戦を終結させるヒントが「西南戦争」にあった

日本で最後に行われた内戦、西南戦争

日本の最後の「内戦」は九州で起った西南戦争です。一方、現在も世界には内戦で苦しんでいる国が数多くあります。そこで、西南戦争が日本で最後の内戦となった理由を明らかにし、世界の内戦終結に役立てようという研究があります。西南戦争とは、江戸時代に武士であった士族の明治政府に対する反乱でした。最終的には反乱は制圧されましたが、明治政府は単に武力だけで士族を抑えたわけではありません。士族が持っていた特権を経済的な手法を使って解体したのです。

秩禄処分で士族の特権を解体

士族の特権の1つに家禄と呼ばれる給与制度がありました。これは、武士が軍役を提供することに対し、幕府や大名家から支払われた給与のことです。ところが、明治になって国民皆兵の原則に基づく徴兵制度ができると、士族だけに家禄を支払う理由がなくなりました。ただ近代化を推し進める政府としては、家禄の支払いを急に中止すると士族の生活が困窮し、不満が一気に高まる恐れがあり、止めるわけにはいきませんでした。そこで明治政府は、家禄の数年分にあたる国債を士族に渡し、この特権を回収するという方法を考案、実施しました。これを秩禄処分と言います。この秩禄処分により士族の特権は解体され、明治政府も巨額な財政負担を改善することができました。

我々の経験からの提言

秩禄処分だけではなく、廃刀令や徴兵制など急激な西欧化政策に不満を持つ士族がいました。そんな士族が起こしたのが佐賀の乱や西南戦争です。無視できない武力を有した薩摩の士族に対しては、ほかの地域よりもよい条件で国債を提供しました。しかし、こうした内戦は起ってしまいました。秩禄処分は内戦の新たな火種になったことも事実ですが、その後の内戦を抑えた要因の1つでもありました。世界で現在起こっている内戦の終結では、新旧権力者の特権をいかに解体するかという点も重要なテーマの1つです。明治政府の行った秩禄処分は、現代に生きる我々に内戦終結のヒントを与えてくれているのではないでしょうか。

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立命館アジア太平洋大学 アジア太平洋学部  教授 淵ノ上 英樹 先生

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平和学、経済学

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立命館アジア太平洋大学(APU)で、経済学や平和学の講義を教えています。あなたは社会に出ると多くの矛盾に直面することになります。領土問題がよい例ですが、2つの相反する主張が対立しています。こういう場合、どうやってこの問題を解決すればいいのでしょうか。大学では講義やいろいろな体験を通じて、このような問題を自分で探し、その問題を自分で解くという作業をします。これを「学び」と言います。あなたもぜひAPUに来て、世界中から集まった学生と一緒に、「学び」にチャレンジしてください。

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