変化する戦争の様相――憎しみの連鎖を断ち切るには?

国家対国家から対テロ戦争へ
第二次世界大戦の後、1980年代までは東西冷戦の時代と言われました。アメリカとソ連(現在のロシア)という二大国によるイデオロギー対立が、世界を東西2つの陣営に分けていました。しかし、冷戦以降状況は大きく変化していきます。国家対国家の戦争よりも、民族対立による内戦や国際テロ組織などによる紛争が増加します。
戦争の無人化による憎しみの拡大
もう1つ戦争の様相を変えたのは、技術の発達による戦争の無人化です。現在では、AIの進歩によって、無人機による自律的な攻撃も可能となっています。攻撃する側からすれば、兵士を命の危険にさらす必要がないという利便性と効率性を追求した手段です。しかし攻撃される側にとっては、相手は安全圏から攻撃してくるわけで、そのことがますます憎しみをあおります。それが弱者側にさらなるテロリズムを生み、テロ組織の活動のモチベーションとなった結果、紛争は長期化するようになっていきます。
技術の発達は「グローバリゼーション」を進める原動力ですが、欧米主導のグローバリゼーションが進んで世界がフラット化すればするほど、自分のアイデンティティがわからなくなってしまうことに戸惑い、欧米型の価値観が主流となっていくことに対する反発も強まっていきます。だからこそ画一化に対抗し、自分たちの宗教的・民族的なアイデンティティを守ろうとするわけです。
憎しみの連鎖をどう断ち切るか
人はすぐに「分類」したがる生き物です。自分が何者であるかを納得したいがために「我々 vs やつら」という対立の構図を意図的に作り出し、そこに優劣を持ち込みます。人種や民族がその代表例ですが、そうした分類はたいていの場合客観的な根拠を欠いています。分類して自分に虚構の優位性を与えようとする人間の弱さをしっかりと直視しなくてはなりません。他者を単純化したイメージで理解しようとする人間の性から解放されることで、他者への想像力も高まっていきます。そこに憎しみの連鎖から脱け出すヒントがあるはずです。
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