アニメや映画から社会問題を読み解く、メディア研究

アニメや映画から社会問題を読み解く、メディア研究

アニメの中に社会問題を見る

メディア研究では、映画やアニメなどに映し出される社会問題を取り上げます。例えば『ポカホンタス』というアニメ映画があります。これは、アメリカ原住民の娘、ポカホンタスと新大陸征服にやってきたイギリス人、スミスが恋に落ちる物語です。2人は原住民と英国入植者の戦いをやめさせようとします。ただ、人種の壁を越えて問題を解決していくことのみが、話の中心テーマではありません。もっと複雑な人種間の歴史についての思想が読み取れます。

「描かれていること」と「描かれていないこと」

それが端的に表れているのは、それぞれの人種の描き方です。原住民は長い黒髪で、着ている衣服も少なく、いわゆる原始的なイメージで描かれ、言葉も叫び声を発しているかのように表現されています。部分的には彼らにとって、英国入植者(白人)文化は当然受け入れるべきものであると解釈できるシーンも出現します。さらに、対立していたポカホンタスの父も、物語の最後には入植者を理解するという終わり方になっています。その一方で、入植者と原住民の歴史に関しての多くがスクリーン上に表れません。血みどろの戦いはなく、ポカホンタス自身の白人文化を受け入れる苦悩も描かれていません。このアニメは、実在の人物をもとに描かれていますが、ロマンスを前面に出されていて、入植者による征服における暗い部分が隠されてしまっているという見方もできるのです。

商業的成功のための表現

もう一つ、このアニメから読み取れるのは、性(ジェンダー:作られた性差)的な表現です。ポカホンタスは、ドレスを着て腰がくびれたプロポーションのよい美人として描かれています。史実によると彼女は13歳前後だったので、これは作られたイメージだと考えられます。メディアの作り手が商業的成功のために、多くの観客が理想化する女性の(あるいは男性の)タイプを作品の中に取り入れる可能性は否めません。このように、作品を文化的、社会的な面から批判的に読み解く力を「メディアリテラシー」と呼んでいます。

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先生情報 / 大学情報

立命館アジア太平洋大学 アジア太平洋学部  教授 吉田 香織 先生

立命館アジア太平洋大学 アジア太平洋学部 教授 吉田 香織 先生

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文化人類学

メッセージ

私の主な担当科目はメディア関係です。アニメーションや映画といったメディアの中の作品から、社会的な問題、例えばジェンダーや民族問題をテーマにしています。メディア研究は、文化人類学、社会学、異文化理解などの研究領域から成り立っています。社会問題について、メディアが視聴者に与える影響に興味がある人であれば、メディア研究を行うことでいろいろなことが明らかになり、社会のありようと結びつけながらメディアを批判的に見るというメディアリテラシーが身につきます。

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我々が生きている社会は、数多くの問題を抱えています。世界で貧困や内戦に苦しむ人をどう救済するかといった世界の問題から、放射能汚染・原発問題をどうしたらいいのかといった国内の問題までさまざまです。APUに来て、全体の半数で世界約90ヵ国・地域から集まった学生と、時には意見をぶつけ合い、時には協力し、時には相手を支え、時には相手に支えられながら、社会が抱える問題を自分で探しだし、それを自分で解くと言う「学び」にチャレンジしてみませんか。