成果が出ないからといって研究開発をやめてはいけない

成果が出ないからといって研究開発をやめてはいけない

技術革新の成果が出るまでにはタイムラグがある

「技術革新」は経済成長の大きな要素ですが、すぐに成長につながるわけではありません。研究開発で新しい技術が誕生すると、しばらくは同種の技術との間で淘汰が始まります。また、製品化するためには関連技術の開発も必要になるでしょう。その一方で、企業は市場を見て売り上げの見込みを立てます。結果によっては、技術があっても製品化しない場合もあります。技術革新の成果が表れるまでには、どうしてもタイムラグが生じます。このような状況は、一時的に経済成長を鈍らせるかもしれません。

業界や国を越えて波及する技術

新しい技術は業界や国といった境界を越えて波及していきます。ある業界で誕生した技術がその業界では日の目を見ず、別の業界で製品化されることがあります。国家間でも同じことが言えます。これは技術の性質にもよりますし、業界や国の社会システムなどが影響する場合もあります。さらに、淘汰によっていったんは忘れられた技術が、別の場所で復活することもあります。このような技術の移転は、特許はもちろんのこと、関連技術を含むものの移動、技術者の移動、あるいは企業買収などによる資本の移動によっても起こります。その経過は複雑で、多岐にわたるのです。

技術だけではなくプロセスにも革新がある

「革新(イノベーション)」は、技術のほかにプロセス(手続き)にもあります。生産や販売、経営を効率よく行うための革新です。開発でも消費者にアイデアを求めるなど、情報での革新も考えられます。ただ、技術を含むこれらの革新には、成果予測を数値にすることが難しいという問題があります。そのため、研究開発の成果がすぐに出ないと、開発をやめたり研究開発費が削減されたりする場合があります。しかし、技術革新の成果が出るまでの過程は複雑なので、結果がすぐに出ないからといって、研究をすぐにやめるべきではありません。技術革新には先見性と合わせて長期的な視点も必要なのです。

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立命館アジア太平洋大学 国際経営学部  准教授 大塚 宏蔵 先生

立命館アジア太平洋大学 国際経営学部 准教授 大塚 宏蔵 先生

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経営学

メッセージ

私の専門は経済成長と技術革新です。高校の頃までは勉強が嫌いで、教室を離れるとまったく勉強しない怠慢な生徒でしたが、大学で経済学と出会ってからは、こんな楽しい学問があったのかと思い勉強しはじめました。自分が経験する実社会の内容が、経済学に直結していることがわかり、そこから経済学でも必要な数学などほかの勉強にも興味を持つようになったからです。あなたにも経済学の楽しさを知ってもらって、学ぶ楽しさや社会や経済の問題をみんなで考える面白さに気づいてもらいたいと思います。

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我々が生きている社会は、数多くの問題を抱えています。世界で貧困や内戦に苦しむ人をどう救済するかといった世界の問題から、放射能汚染・原発問題をどうしたらいいのかといった国内の問題までさまざまです。APUに来て、全体の半数で世界約90ヵ国・地域から集まった学生と、時には意見をぶつけ合い、時には協力し、時には相手を支え、時には相手に支えられながら、社会が抱える問題を自分で探しだし、それを自分で解くと言う「学び」にチャレンジしてみませんか。