リアルタイムの揺れの速報まできた地震対策の世界の今後とは!?
震源地はバツ印の地点のみという誤解
TVの地震速報では震源地にバツ印がついています。しかし、地震現象のすべてがそこで起きているのではなく、マグニチュード9クラスの地震になると震源域は数百kmという空間的広がりがあります。また同じマグニチュードの地震でも、激しく揺れるものやあまり揺れずに津波を引き起こすものなど、タイプは千差万別です。こういった地震のメカニズムの多様性は1970年代には解明されていましたが、精細な解析による「証拠」が揃ってきたのは1980年代に入った頃からで、どの断層がどんなふうにずれたのか、どんな地震波がどう伝わったのかまでが時間をかけずにわかるようになりました。
緊急地震速報は「地震予知」ではない
そして1990年代後半に入っての計測機器や通信ネットワークの発達で、ほぼリアルタイムでの地震速報が可能になりました。地震はある場所で起きて揺れの波が周囲に伝わる現象です。秒速6~7kmの地震波より電波の進む速さのほうがはるかに速いので、地震がどこで起きたかを即座にキャッチできれば、揺れるであろう地域に「揺れ」の予告をすることができるのです。阪神・淡路大震災を契機に全国に1000個以上の地震計が設置されたことと、通信技術の発達で瞬時の情報管理が容易になったために、揺れが来ることをチャイムで知らせる「緊急地震速報」が実現したのです。ただし緊急地震速報は、あくまで「揺れ予告」で、地震予知ではありません。
予知至上主義から複合的な防災対策へ
これだけテクノロジーが進化しても、残念ながら「地震予知」はできるようになっていません。予知は大切ですが、予知ができても被害がゼロになるわけではないのです。まずは地震をよく知ることが地震の被害を最小限にするための基本です。観測データという科学的証拠に基づいて議論した上で、個人はどうすればよいか、行政はどうすればよいか、社会システムをどうすればよいかという、各分野やレベルにわたった複合的な計画を作り実行していくことが最大の防災対策となるのです。
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先生情報 / 大学情報
関西大学 社会安全学部 安全マネジメント学科 教授 林 能成 先生
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