災害リスクが高まる都市、いったい誰が守るのか!?
人間は危ない場所に住みたがる?
都市が持つ危険やリスクを減らすには、個人や地域の力では限界があります。例えば、人間は自由にどこにでも住んでいいとなると、どのような場所を選ぶでしょうか。狩猟生活の時代は獲物が獲れる場所に住みましたが、やがて農耕が始まると、川があって水はけが良く土壌も良い、作物が育ちやすいところに集落ができました。アジア全体をみても、このような土地は水害や地震が起きやすい性質を持っています。生きるのに適した土地は、自然災害の起きやすい土地でもあったのです。現在発展してきた都市はそのような歴史を持っているところがほとんどです。
都市の急激な拡大が新たなリスクを生んだ
経済が発展するにつれ、都市部ではサービス産業が発達し地方から仕事を求めて多くの人がやってきます。すると環境は悪くても、人々が密集して安価に住むようになります。こうして木造密集市街地ができあがり、火事などの延焼危険性が高まり、また消防車が進入できず被害が拡大する、といったリスクを増大させることになるのです。東京の都市化の経緯をみても、拡大し続ける都市に防災対策がついていけず、都市防災上重要な広い道路が十分に整備されないまま現在に至っています。危険の潜みやすい場所ほど人が集中し、それがまた新たなリスクを生むという悪循環が生まれます。
大きなスケールでの防災計画は「官」の仕事
防災対策の講じ方には2種類あり、ひとつは住民に危険であることを理解させ、自分自身で行動を起こしてもらう方法です。もうひとつは、住民が特に意識しなくても、例えば消防や救急のように安全対策システムを稼動させたり、広域避難場所などの施設を増やしたり、不法建築が集積する地域を整備したりという、大きなスケールで対策を講じる方法です。後者は特に自治体や国などの「官」(公務員)が中心となり担う仕事です。普段は人目にはつかなくても、中長期的視点で徐々にリスクを低減していく作業が、今日も都市のどこかで進んでいます。
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先生情報 / 大学情報
関西大学 社会安全学部 安全マネジメント学科 教授 越山 健治 先生
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