大雨や大雪をもたらす雲の構造の解明は自然災害の軽減に貢献する

大雨や大雪をもたらす雲の構造の解明は自然災害の軽減に貢献する

雲の構造の時間発展は十分に解明されていない

日本は世界有数の自然災害多発国です。特に、大雨や大雪による甚大な被害が頻発しています。気象予測の技術は絶え間なく向上しているとはいえ、大雨や大雪の発生(いつ、どこで、どのくらいの雨や雪が降るのか)を高い精度で予測することは今でも非常に困難です。この理由の一つには、大雨や大雪をもたらすような雲の実態が十分に解明されていないということがあります。これらの雲の3次元構造の時間発展が解明され、雲内での雨や雪が形成される仕組みが明らかにされることが望まれます。

大雨や大雪をもたらすような雲のタイプ

基本的に雲は十種の雲形に分類されます。これらの雲の中において、大雨や大雪などをもたらすような非常に活発な雲のタイプの代表は積乱雲です。竜巻や雹(ひょう)もこの雲に伴って発生します。積乱雲の寿命は30分から1時間程度です。天気予報で時々耳にする線状降水帯とは、異なる発達段階にある積乱雲が線状に組織化して、線状降水帯の中で積乱雲の世代交代が自発的に行われることで比較的長い時間維持される降水システムです。このような線状降水帯が長時間同じ場所に留まるような場合には、大雨の危険性が高まります。
日本海側で大雪をもたらす雪雲の多くも積乱雲です。この積乱雲は夏季の積乱雲と比べると雲頂高度は高々数kmと比較的浅いのが特徴です。このような浅い雲から大雪がもたらされるという点において、日本海降雪雲は世界的にみても非常に珍しい雲です。

大雨や大雪を発生させる仕組みの解明が待たれる

大雨や大雪は雲によってもたらされます。大雨や大雪を発生させるような雲が発生する大気条件や雲の内部構造の時間発展、雲間の相互作用、雲内での雨や雪の形成機構などが十分に解明されるようになれば、大雨や大雪の予測精度が向上し、自然災害の軽減に貢献できるでしょう。

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叡啓大学 ソーシャルシステムデザイン学部 ソーシャルシステムデザイン学科 教授 山田 芳則 先生

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地球科学、自然災害科学

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高校での学びは、大学だけでなく生涯にわたる基礎力となりますので、高校生のうちに十分な基礎学力を身につけて下さい。国語はすべての学修の基礎ですので、しっかりと学んで下さい。数学や物理学は、地球科学だけでなく、経済学や社会科学にも重要になってきています。地球環境を学ぶ上では化学も大切です。英語は学術や日常において外国の人とのコミュニケーションの道具です。現代のような情報過多の時代においては、何が正しくて何が正しくないのか、学びで得た知識が助けになるでしょう。

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