「音環境」をデザインするための科学

「音環境」をデザインするための科学

音環境のデザイン

「音環境」とは、さまざまな音や声、音楽が氾濫し、音によって人間が取り巻かれる環境を指します。そして、それをデザインすることを「音環境デザイン」と呼びます。例えば、日本の駅では電車が発車するときにメロディが流れます。これは外国人に驚かれることの1つですが、聞く人々にストレスを与えずに発車を伝えられると同時に、番線ごとに区別して音がデザインされているということです。このような、人に何かを知らせるための音を「サイン音」と言います。緊急地震速報もその1つですが、パニックを起こさせてはいけないし、安心させてもいけない適度な緊張感を出すため、裏付けに基づいてデザインされた音が使われているのです。

音の認識と「インデキシング」

人間はふだん目をつぶっていても音を聞くと何が起きているか、例えば、車が走っているとか、たくさん人がいるなどということがわかります。ラジオでも、だいたい2、3秒聞くだけで、ニュースなのか、野球中継なのか、音楽番組ならクラシックなのか演歌なのかなど、どんな番組かが判断できます。この音の識別能力を生かして音の「インデキシング(indexing)」という研究が進められています。これは長時間流れる音の中から探したい音を見つける機能です。これまでもラジオなどで番組の頭にインデックスをつけてその時点に戻ることはできていましたが、それを発展させて番組の途中にある音でも探し出せるような研究が進んでいるのです。

生活の記録「ライフログ」にも応用

最近のトレンドとして、日々の生活を写真や音声、映像などを使って外部メディアに記録するライフログと呼ばれる研究があります。これにインデキシングを応用すると、データベースとしてログが有効に使えます。24時間すべての音声を聞き直して探すには、24時間以上の時間が必要になりますが、自動的なインデキシングができれば一瞬で探したい音にたどり着けるのです。

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先生情報 / 大学情報

千葉工業大学 先進工学部 未来ロボティクス学科 教授 大川 茂樹 先生

千葉工業大学 先進工学部 未来ロボティクス学科 教授 大川 茂樹 先生

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音響学、音声工学

メッセージ

高校までの間は、先生に「こういうことをやりなさい」と言われてやるという受動的な勉強が多かったと思います。大学に入ると受動的から能動的に変わります。どういうことかと言うと「自分でものごとを考えて問題を解決する」という学問に変わってくるのです。私は人の音声の獲得や音声認識に興味があったので、今の道に入りました。そして音を聞く側、発する側の双方から幅広く音の問題に携わっています。ぜひ自分のやりたい分野を見つけて能動的な学問に取り組んでいけるよう、頑張ってください。

千葉工業大学に関心を持ったあなたは

芸の上達には、向き不向きというより、好きか嫌いかが大きく影響すると言われます。学問の道もそれに違わず、まずは興味・関心を持てることが大切です。そしてそれができたら、あとはちょっぴり努力とともに創造力を働かせればいいのです。いま「できない」ことはまったく問題ではありませんし、気にすることもありません。本学では、基礎から学べるカリキュラムが充実していますので、安心してあなたの未来が築けることでしょう。