イルカには音の世界が広がっている
超音波を聴き、発する
イルカのいる海の中には波浪や雨の音、生物の音などさまざまな音が存在し、水中で音は空中の4.5倍の速さで非常に遠くまで届くことから、音の世界が広がっています。音を聞き取れる周波数の範囲「可聴域」は、ヒトが20ヘルツから20キロヘルツなのに対し、イルカは数百ヘルツから150キロヘルツ程度と幅広く、超音波を聴き、発することもできます。イルカは超音波を出して、はね返ってくる反射波によって物体の形や大きさなどを判別するエコロケーション(反響定位)も行っています。
音で仲間との結束を維持する
イルカは光がほとんど届かない海で、どうやって群れとしてのまとまりや母子の結束を維持しているのでしょうか。それは、個体に特有の音タイプやグループに特有の音タイプを鳴き交わしているのです。鳴き交わしに使う音タイプやそれに載っている情報は種によって異なります。例えばバンドウイルカはホイッスルという口笛のような音を使い、カマイルカは数種類のパルス音が繰り返される一続きの音を使っています。また、ハンドウイルカやシロイルカは個体特有の音タイプを持っていますが、シャチやマッコウクジラではグループメンバーが数種類の音タイプを共有しています。社会や生息環境などさまざまな要素が関わってイルカの多様な音が進化してきたと考えられますが、その進化の道筋はまだまだわかっていません。
人間が生み出す騒音の影響
人間がイルカやそのほかの海洋生物に与える影響も調べる必要があります。海洋環境は今、騒音に満ちており、船の音や地震探査、風力発電、掘削、ソナーなどが原因です。これらの騒音の周波数の範囲と、鯨類や鰭脚(ききゃく)類、魚類などが発したり聴いたりする周波数の範囲が重なっています。騒音による聴覚障害や、ストレス、コミュニケーションの範囲が狭まるなど、さまざまな影響が報告されており、影響評価を行うことが重要となってきています。
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東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋資源エネルギー学科 助教 三島 由夏 先生
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