数学で見える、「虫の大量発生」と「ビンのふた」の共通点

数学で見える、「虫の大量発生」と「ビンのふた」の共通点

世界で起こっている現象を数学で説明

惑星の運行、川の水の流れ、人口の増減、気候変動など、この世界で起こる現象は、さまざまな力がお互いに作用しあって時々刻々と変化しています。数学はこうした変化を説明し予測するための有力な手段の一つです。
このような自然現象や、社会現象の変化のプロセスを理解するときに重要な着眼点の一つが、数学で使われる「分岐」という概念です。「分かれ道、ターニングポイント」というような意味で、分岐に着目していろいろな現象を数学で表わしてみると、一見、何の関係もないような事象に、同じような構造、パターンがあることがわかります。

虫の大量発生とビンのふたがへこむ現象

例えば、「昆虫の大量発生」という現象なら、昆虫の個体数が徐々に増えていき、ある時点で爆発的に増加することがあります。このような急激な変化を「分岐」によって説明し予測することができます。一方で、金属の板の動き方にも「分岐」があります。食品の真空ビンなどの、薄い金属のふたを指で押してみると、徐々にへこんでいくのではなく、ある時点でペコッとへこみます。
「昆虫の数の増加」と「金属の変形」という、全く関係がないように見えるものでも、数学で説明してみると、その構造が似通っているのです。これは、生物学や物理学、化学などの視点で変化のプロセスを理解しようとするときとは異なるアプローチであり、数学的な説明でしか見えないパターンが見えてくるのです。

未知の問題に解決のヒントを

このように、現象を数学的に説明しようという研究がさまざまな対象について行われています。数学的な構造が似ている現象がわかれば、未知の問題の解決に役立ちます。全く別の分野であったとしても、構造が似ているものをヒントにして糸口を見つけることもできます。
「昆虫の数の増加」や「金属の変形」の例で主に使われるのが「微分方程式」という分野です。これまで、数学者たちによって高度な微分方程式が構築されてきましたが、高校で学ぶ程度の微分方程式で理解できる現象もあります。

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長野大学 共創情報科学部(仮称) ※2026年4月設置構想中  准教授 渡辺 毅 先生

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メッセージ

生活の中のいたるところに数学があり、計算があります。例えば、電車の運行システムなどのサービスを裏側で支えているのは計算ですし、自然現象も数学で説明できるものがたくさんあります。またスマホアプリ等の情報システムは、人種、性別、文化や宗教などさまざまな違いがありながら、どんな人も直感的に操作できます。それは、システムの背後に宇宙に共通の数学があるからだと思います。数学は、多様な人々の共存を可能にする大きな可能性を秘めています。数学を苦手と感じている人は、是非、身近な数学に関心を寄せてみてください!

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長野大学は、1966年に地域の熱い期待を背負って誕生した「地域立」の大学です。本学は地域にある課題を発見し、地域とともに解決していく実践的な学びを大切にしています。地域には豊かな自然環境や歴史が宿る文化遺産、経済を牽引する産業や観光資源、安心して暮らせるまちづくりなど学びの要素があふれています。地域社会をフィールドに、主体的に考える力や、問題に対して多面的に取り組む力を養いながら漠然とした問題を明確化し、逆境に立ち向かっていける足腰の強い人材を育成します。