地球環境の悪化を食い止める決め手は……“土”!?

地球環境の悪化を食い止める決め手は……“土”!?

土の改善ができれば温暖化を防げる

近年、地球温暖化によるさまざまな環境悪化が心配されています。温暖化の原因のひとつである二酸化炭素の排出量を抑制するため、化石燃料(石油など)に頼らない太陽や風力などのクリーンエネルギーの開発、そして、炭素を排出しない電気自動車などの利用が積極的に進められています。緑化することによって植物に二酸化炭素を吸収させる試みもなされていますが、実は炭素の固定量(中に閉じ込める量)が多いのは植物より“土”で、土壌の質を改善することで地球温暖化を防げるのではないかと期待されています。

土壌が良好だと、ウィルスの脅威にも対処できる

土は主に「フミン酸」や「フルボ酸」と呼ばれる腐植物質と粘土鉱物から構成されています。これらの成分を化学的にアクティブ(良好)な状態に保つことができれば、土中の多様な微生物群がイキイキと働くので、食糧資源の増産、砂漠化の抑制につながります。また、農薬などの汚染を土中で分解し流出を防ぐので、川や海の水質向上にもつながると考えられています。こうした化学的にアクティブな土であれば、土中の微生物がウィルスの拡散を防いでくれるので、最近、大きな問題になっている口蹄疫(こうていえき)やさまざまな伝染病に対しても、有効なのではないかと言われています。

地球の土がどうやってできたか、宇宙で実験

近年、月や火星などのまだ進化の途中にある星を研究することで、地球の土がどのようにできたのかを解明しようという研究が進められています。物質の進化が行き着くところまで進んだ地球に比べ、月や火星には土がありません。そこで、月や火星の鉱物を研究することで、地球の土の生成由来を解明しようとしているのです。地球では温暖化や砂漠化などの影響により、食糧問題が切迫感を増していますが、“宇宙農業”が可能になれば地球の食糧問題も解決できるかもしれません。土壌の研究は、地球環境や人類にとって、救世主になるかもしれないのです。

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千葉工業大学 工学部 応用化学科 准教授 矢沢 勇樹 先生

千葉工業大学 工学部 応用化学科 准教授 矢沢 勇樹 先生

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生命環境科学、地球環境工学

メッセージ

自分が生まれ育った地域の自然環境に興味を持ってほしいです。どんな農作物や工業製品が生まれているのでしょうか。例えば、房総半島には、地下深くにメタンとヨウ素、フルボ酸を含んだ古代の海水があります。フルボ酸は栄養素を含まないのに植物をとても元気にする不思議な物質です。これを砂漠化防止に利用できないか?と考えるような思考を育ててほしいと思います。あとは、「これができたらすごく幸せ」という夢を持ってください。常識にとらわれなくてもよいのです。夢を実現できるのはどこの大学か?という目で進路を考えてください。

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芸の上達には、向き不向きというより、好きか嫌いかが大きく影響すると言われます。学問の道もそれに違わず、まずは興味・関心を持てることが大切です。そしてそれができたら、あとはちょっぴり努力とともに創造力を働かせればいいのです。いま「できない」ことはまったく問題ではありませんし、気にすることもありません。本学では、基礎から学べるカリキュラムが充実していますので、安心してあなたの未来が築けることでしょう。