目や耳から受ける刺激から、何を見るか、何を聞くかは脳が決めている
目で見たときに起こる錯覚、「錯視」
実際に見たり聞いたりした情報と違って知覚されることを「錯覚」と言います。錯覚の中で、目で見たときに起きるのが「錯視」です。ものの形や長さ、大きさ、色の濃淡、明暗などに関するさまざまな錯視があります。よく知られている錯視の一つに「エビングハウスの錯視」があります。同じ大きさの円でも、周りに大きい円が並ぶと小さく見え、周りに小さい円が並ぶと大きく見えるというものです。毎年数多くの錯視が発見されており、錯視コンテストが行われているほどです。
「錯聴」は、耳で聞いたときに起きる錯覚
耳で聞いたときに起きる錯覚は「錯聴」と言います。刺激や条件を変えることで同じ音でも聞こえ方や音の高低が変化します。「楽音復元効果」という錯聴があります。例えば、『エリーゼのために』や、『子犬のワルツ』などのピアノのメロディーの一音を削除してそこに「ザッ」という雑音を挿入しても、削除したはずの音が聞こえます。同様に、映画館で、映画の登場人物の言葉が隣の人のせんべいを食べる音に一瞬かき消されても、話す言葉がよどみなく聞こえてきます。これらの錯聴は、存在しないはずの音が知覚的に復元されて、脳が補って「聞こえたこと」にしているのです。
また、錯視と錯聴が組み合わされた「マガーク効果」という錯覚があります。映像では「私はケストが怖い」と言い、それに「私はペストが怖い」という音声をかぶせると「私はテストが怖い」と聞こえるのです。
錯覚は脳の働きによって起こる
錯覚は多岐にわたって起こりますが、これは脳の働きによるもので、目や耳から受ける刺激を材料として何を見るか、何を聞くかは積極的に脳が決めているのです。なぜ脳がそのような働きをするのかは進化の過程で必要だったからではないかと考えられますが、詳しくはまだ解明されていません。錯覚と脳の働きの関係には不思議なことがたくさんあり、研究する価値があるテーマが数多く残されている学問分野なのです。
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