FPGAで実現! カスタマイズできる次世代の海洋観測技術
海の状態を一望にとらえる
地震による津波の発生を予測するために、海上に浮かべたブイに設置されたGPS受信機(GPS波浪計)が使われています。しかしGPS波浪計で得られるのはピンポイントのデータのみで、1機あたり数億円と高価で維持費も高額、また増やし過ぎると船の運航の妨げになるといった問題があります。一部の地域では海底観測網が設置されていますが、これで得られるのは海底の情報のみです。
この課題を解決するために「短波海洋レーダー」という技術が開発されています。このレーダーは、陸上から電波を発射して、海面で反射して戻ってくる電波を解析することで、海流の速さや向きを計測します。これにより、広範囲の海の状態を「面」としてとらえられるようになりました。
FPGAを活用してコストを低減
短波海洋レーダーも一機あたり数千万円から数億円と高価です。そこで「FPGA(Field-Programmable Gate Array)」という、ユーザーが自由にプログラムできる汎用性の高い半導体チップを使ったレーダーの製作が試みられ、1000万円以下で作ることに成功しました。FPGAは後から機能の追加・変更が可能なため、測定距離や精度などのパラメータを簡単に変更できて、場所や目的に応じて柔軟に対応できるということもメリットです。
知られざる海の姿を明らかに
この新しい短波海洋レーダー技術の実証実験が、すでに新潟県や静岡県、北海道などで行われています。将来的には、全国200カ所程度にレーダーを設置して日本全国の沿岸域を観測する計画もあります。このレーダーで得られるデータは、津波の早期検知だけでなく、漁業の支援や海洋学全般の発展にも貢献することが期待されています。例えば、津軽海峡では寒流と暖流がぶつかる様子を詳細に観測できるようになって、海の環境変化をより深く理解できるようになるかもしれません。今まで誰も見たことがない海の姿を明らかにする「新しい目」の誕生に、多分野の研究者が注目しています。
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先生情報 / 大学情報
熊本大学 情報融合学環 准教授 長名 保範 先生
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