講義No.08578 機械工学

ドローンシステムの開発にも役立つ高校で学ぶ「数学」

ドローンシステムの開発にも役立つ高校で学ぶ「数学」

さまざまな活用が検討されているドローン

従来のヘリコプター型に比べ、複数の回転翼を持つマルチコプター、いわゆる「ドローン」は人間が操縦する場合、比較的簡単な操縦で安定な飛行ができるため、観測、点検、農薬散布、運搬などさまざまな分野での活用が検討されています。さらに、GPSやコンパス、加速度センサーなど複数のセンサーが搭載され、それらのセンサー情報を利用すればドローンの自動飛行制御も可能です。

橋梁点検にドローンを活用するためには

活用例の1つに橋梁の鉄骨、コンクリート点検作業があります。現在は大掛かりな装置や足場を設置し、人間が目視点検することが多いのですが、人間の目視の代わりにドローンに搭載した高精細カメラで橋梁を撮影し、その画像を使って点検できれば、大幅に時間とコストを削減できます。ところが、橋梁の下を飛行するドローンは橋梁の上にいる操縦者には直接見えないため操縦することは難しく、また橋梁の下はGPSの電波が届きにくく、鉄骨の磁化によりコンパスも使えないために自動飛行制御ができません。
そこで考えられたのが、橋梁の上からカメラを吊り下げ、そのカメラ映像を用いたドローンの自動飛行制御方法です。ドローンに色の違う2つのマーカーを取り付け、吊り下げたカメラ映像から認識したマーカーの位置によってドローンを自動飛行制御します。また、マーカーの幅とカメラ映像に描いた四角の枠の幅が同じになるようにドローンを制御すれば、1つのカメラのみで奥行き方向も自動飛行制御できます。この方法なら、人間が操縦することなくドローンに搭載したカメラで橋梁の下の点検が可能となります。

高校数学の知識は製品開発に生かされている

1つのカメラで奥行き方向の自動飛行制御が実現できたのは、数学の力です。高校で学ぶ図形の比や2次方程式、微分積分などを利用して、2次元画像による奥行きの計算、マーカーの位置検出、自動飛行制御が実現できています。さまざまな製品開発には高校で学ぶ数学が生かされているのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

佐賀大学 理工学部 理工学科 機械工学部門 教授 佐藤 和也 先生

佐賀大学 理工学部 理工学科 機械工学部門 教授 佐藤 和也 先生

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制御工学、機械システム工学

メッセージ

高校で学ぶ数学や物理は、およそ200年前までに確立された内容がほとんどで、そのままではあまり役に立ちません。しかし、大学でそれらを基礎として専門科目を学ぶことで、産業界で広く役立つ知識が身につきます。
私の専門の「制御工学」は、工学のなかでも比較的新しい分野ですが、2次方程式の解や微分積分など高校で学ぶ内容がたくさん出てきます。私の最近の研究のドローンの自律飛行も制御工学を使わないと実現できません。高校で学んだことを基礎として、大学で高度な専門知識を身につけ、自らの付加価値を高めてみませんか。

先生への質問

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佐賀大学は、教育・芸術地域デザイン・経済・医・理工・農の6学部からなる総合大学です。キャンパスは本庄地区と鍋島地区に分かれ、どちらも緑溢れるのどかな環境にありながら、九州の中心地である福岡へJRで約30分で行けるアクセスの良さです。本学は学生生活から就職活動、さらには就職後まで「面倒見の良い」教育を進め、卒業生が愛校心を持ち続ける教育を実践し、学生に選ばれる大学をめざしています。研究面においては、産官学共同研究を中心に、中央の大きな大学にも負けない特色ある研究テーマへの取組みを推進しています。