ドローンシステムの開発にも役立つ高校で学ぶ「数学」
さまざまな活用が検討されているドローン
従来のヘリコプター型に比べ、複数の回転翼を持つマルチコプター、いわゆる「ドローン」は人間が操縦する場合、比較的簡単な操縦で安定な飛行ができるため、観測、点検、農薬散布、運搬などさまざまな分野での活用が検討されています。さらに、GPSやコンパス、加速度センサーなど複数のセンサーが搭載され、それらのセンサー情報を利用すればドローンの自動飛行制御も可能です。
橋梁点検にドローンを活用するためには
活用例の1つに橋梁の鉄骨、コンクリート点検作業があります。現在は大掛かりな装置や足場を設置し、人間が目視点検することが多いのですが、人間の目視の代わりにドローンに搭載した高精細カメラで橋梁を撮影し、その画像を使って点検できれば、大幅に時間とコストを削減できます。ところが、橋梁の下を飛行するドローンは橋梁の上にいる操縦者には直接見えないため操縦することは難しく、また橋梁の下はGPSの電波が届きにくく、鉄骨の磁化によりコンパスも使えないために自動飛行制御ができません。
そこで考えられたのが、橋梁の上からカメラを吊り下げ、そのカメラ映像を用いたドローンの自動飛行制御方法です。ドローンに色の違う2つのマーカーを取り付け、吊り下げたカメラ映像から認識したマーカーの位置によってドローンを自動飛行制御します。また、マーカーの幅とカメラ映像に描いた四角の枠の幅が同じになるようにドローンを制御すれば、1つのカメラのみで奥行き方向も自動飛行制御できます。この方法なら、人間が操縦することなくドローンに搭載したカメラで橋梁の下の点検が可能となります。
高校数学の知識は製品開発に生かされている
1つのカメラで奥行き方向の自動飛行制御が実現できたのは、数学の力です。高校で学ぶ図形の比や2次方程式、微分積分などを利用して、2次元画像による奥行きの計算、マーカーの位置検出、自動飛行制御が実現できています。さまざまな製品開発には高校で学ぶ数学が生かされているのです。
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佐賀大学 理工学部 理工学科 機械工学部門 教授 佐藤 和也 先生
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